桃李歌壇

蘇生短歌集 2

平成14年

  短歌集1(平成12/13年) 

2695 皮ジャンの防寒コートに身を寄せし若き二人に浜の元朝 1月1日 10時59分
2698 あまたなる言の葉あれどわがまつはいまは沙汰なき君が言の葉  1月2日 06時41分
2708 初富士の白虎のごとき存生に天動くやに思ひたりけり 1月5日 05時49分
2720 あの旅を思ひてみれは夏の日のモンサンミッシェル干潟にありき  1月10日 08時33分
2727 喜びの時は疾く過ぐつかの間に憂きこと時は沼に澱めり  1月13日 05時39分
2731 いつにても二千歩ほどを歩みゆく絵島を指呼の浜や愛しき  1月15日 05時31分
2743 半島の東の稜のV字から冬日一閃なべて始まる  1月19日 10時26分
2747 河口から遠く離れし石狩の厳しき冬に雪晴をゆく 1月21日 06時30分
2752 入院を重ね萎えゆく老妻をいま助けなと卆寿の父は  1月23日 05時16分
2757 冬至よりひと月余り過ぎしいま日の出の位置は北に目映き  1月27日 05時19分
2763 夕焼けを追ふやうにゆく飛行機は冬空をゆく光る物体  1月29日 06時47分
2770 時としてこの詩のようにさし示すこころにひそむ何かに出会う 1月31日 21時22分
2774 コルク質すべて削がれし大幹はまばゆきまでに白く光りぬ  2月2日 05時30分
2777 紅梅のうつろふさまを背にして今目覚めんと白き梅が枝  2月3日 06時57分
2785 紅梅の色のさめゆく理に朝な朝なの時を惜しめり  2月6日 07時32分
2788 日溜りでいかでか鳥の昵むるは紅いならぬまだき梅が枝  2月7日 08時16分
2795 ぬるむ日の二三日ありて冴え返りまた冴え返りつつ春ならむ  2月11日 06時10分
2803 埋み火の残りし灰のぬくもりが今は小さき炎となりぬ  2月14日 05時16分
2815 のりものに座すやまどろむ吾にとり春眠なべて時をえらばず  2月20日 14時36分
2817 朝まだき渚の春の小波は散りゆくさまに寄するがさまに  2月21日 09時06分
2820 春磯の光まとひし鮎の稚魚(こ)はただよふごとくいのちたのしぶ  2月22日 05時14分)
2824 群れすずめ追ふ椋鳥に四十雀とどめは目白朝の餌場は 2月23日 08時24分
2826 庭隅のひとつ置かれし陶の椅子巣篭もりせんと四十雀とふ  2月24日 11時10分
2837 くぐもれる朝の光は如月のまたくぐもりつ春をもてくる  2月27日 11時45分
2842 乳色のヴェールのような春空を群れゆく鳥の声も乳色  2月28日 15時50分
2862 黎明に春雷四方にとどろきてけふまた楽し競べ歌なぞ  3月11日 05時30分
2864 浅き春まだき潮に鮎の子は日に増し親の姿に群れり  3月11日 14時33分
2866 せせらぎは光の色に流れゐて光を散らす白き指先  3月11日 19時33分
2883 白波の春一番の浜に立ち忘れたきこと風に砕けり  3月16日 05時53分
2896 遠くからその人としる菅帽子ひねもす竿と春とうたた寝 3月22日 05時13分
2900 花の山わきたるさまににぎはひて花のなみだや一陣の風  3月23日 04時56分
2912 過ぎし日のふと浮かびくるさえあるも何処か深く出で来ぬもあり  3月27日 08時59分
2931 けはひする錦ヶ浦の花のころ花にたゆたふ浦は好まし (重陽改め蘇生) 4月6日 19時12分
2933 好ましき春はこの春花の春好きいでたちに春は熟れゆく  4月7日 18時31分
2953 世のことの夢のとぼしき境涯にあふれし夢の昔をおもふ  4月12日 04時55分
2959 海原をかける光のやはらかき好ましきかな春の磯辺は   4月13日 04時46分
2966 くり言もたはぶる言もいつの日か重ねかはすや真言と成らむ  4月14日 05時32分
2973 季うつり山笑むさまも好ましき朝の斜光に破山一笑   4月16日 05時10分
2990 よきことのうれふることのめぐるなむ人恋ふことのせつなきことの 4月19日 04時35分
2997 塀の外地に重なりし赤椿長き旅路か開かぬ雨戸に    4月20日 06時11分
3036 うつろひの季をかざりし花々の盛りしときをはや忘れめや  4月30日 05時06分
3042 ふと見ればモネの日傘の舞うように初夏はとりどり谷(やと)の風道  5月2日 06時24分
3049 花めくや笑みにすべてを包みても眉間(まゆま)に浮かぶ徒し心は  5月3日 19時24分
3051 孤高なる赤富士はるかフジ子聴くにぎはふ浜にひとり楽しむ  5月4日 09時32分
3071 眼差しは真を射んとして暫しまたゆっくりと目蓋を伏せり  5月10日 04時55分
3073 好きだよといへばくすくす笑ふだけモネの日傘の風に舞ふやに  5月10日 08時07分
3079 抜栓のコルクに想う星霜を生きしワインをいざいざ飲まん  5月11日 19時05分
3082 窓外の雨上がりなる透明にグラスを満たすレッドワインで  5月12日 06時14分
3088 真をば求めんとして迷ひたり返し迷ひつ真はここに 5月13日 04時48分
3101 築山のこんもりとした植え込みのにほい立ちたる躑躅の中に  5月16日 04時57分
3111 窓の外明るく過ぐる幾波にも黄色の傘の登校の子ら 5月18日 05時22分
3118 そそくりし四十五年のなりはひをおさめあしたの望みおはばや  5月19日 07時18分
3120 短夜に七部集など紐解きてのっと日の出を拝む江ノ島 5月19日 14時32分
3124 二組の母子の間にワイン酌む弾む会話に今宵楽しき 5月21日 05時10分
3145 くねくねとビルをぬひゆく「ゆりかもめ」ブリッジゆれてゆりかもめ追ふ 5月25日 08時10分
3149 桑の実を手に跨ぎたる枝間より機銃掃射のグラマンの人  5月25日 19時23分
3153 ベル鳴りて冬を残せし二の腕のわが頬かすめ吊り輪に向かう  5月26日 17時05分
3164 ちはやぶるはたた神なる饗宴は連戦なるとも衰ふ気もなし   5月29日 05時22分
3170 東雲の雲か海かの水平に啓示のごとき光ありなむ  6月1日 08時40分
3175 ものなべて激しく醸すときをへむ待つなむときを熟し成るまで  6月3日 09時26分
3177 '61なる類い稀なるヴィンテージ熟し成りたりテロアを想ふ  6月4日 09時41分
3185 様は無く、さん、君、ちゃん、も無しがいい呼べば親しき二文字三文字  6月5日 19時09分
3190 低空に群をなしたる浜鳶は子の手の菓子を将に襲うぞ 6月7日 09時00分
3199 混とんの世にFIFA2002げに虚ろなむとき過ぎゆけば 6月11日 04時24分
3209 せいたかのひまわりの実の黒々とアンダルシアの果てなき地平を  6月15日 14時17分
3215 信号の三つの色の点滅にわが人生の来しかたを見つ  6月18日 04時17分
3217 真紅なるフラッグうねりてモナコ夏F1の火の揺るがす中に  6月18日 05時24分
3225 刻々と色を織りなす潮目をば魚の心で好むはやわが  6月21日 09時57分
3230 北国の遅々なる春を待ちきれず緑したたる初夏は来にけり  6月23日 07時21分
3237 きざはしの古きついりてしづけしく幾年ほどのついりを経るや  6月25日 19時09分
3244 湧き立ちし柿田の水の永久なるか不二なるものはゆかしき君か   6月30日 18時41分
3249 わが地球FIFA一色の時過ぎて空中衝突の報せありたり  7月2日 19時34分
3254 西域の洋上はるか台風の余す高波に強きを推しぬ  7月5日 12時13分
3261 空限る墨描く如き夏富士は台風一過の雲を見遣りぬ   7月8日 07時28分
3264 白朧の平らき空をカンバスに梅雨夕焼けが紅さしはじむ  7月10日 12時55分
3273 沖目よりうねりてすだく高波の岩にくだける音ぞ百様  7月19日 20時45分
3278 四五発の五臓六腑へ大花火たちまち夕べのしじまとなりぬ 7月27日 05時30分
3280 片影の失せし十字で立止まり思い違わぬ人と見合いつ  8月1日 08時15分
3282 夏の日の白きヴェールの高空に鳶の一羽が天になりをり  8月4日 17時34分
3285 立秋と知りて誰ぞが吹き寄こすおなじ昨日の山の涼風  8月8日 05時07分
3287 涼しげに宙に舞いたる鳶二羽われらが炎暑あざ笑うかに  8月9日 18時19分
3290 高波に洋上遥か台風の猛き自然の理を知る  8月18日 15時12分
3293 虫の音に同じからずやこの秋は万感ありて兆す何かを  8月24日 08時12分
3295 炎天に黙するやうに色なせる百日紅は日々にあたらし  8月27日 10時55分
3298 偲びつつアンペリアルのラトーゥルをグラスに満たす八月尽の夜  9月1日 13時38分
3301 東雲の小高き丘の稜線の黒き影絵が色づくまでを  9月4日 05時35分
3304 けふの秋いろなき雨のたのしけれみどりとわれはおなじ恵みに  9月6日 10時46分
3308 重九を迎えんとしてわれの代は激し六十有余年かな   9月8日 14時44分
3312 重ね詠むげに重九のカキコにも星に託せし願いあるやも  9月9日 18時21分
3316 重九の明けにし今朝の山緑なにやら兆す錆の色など  皆様ありがとうございます 9月10日 09時32分
3320 繰り返す9イレブンの映像に祈りは見えず悲しみの詩   9月12日 07時31分
3322 秋冷のわずかに固き朝ぼらけ目覚めてはまたうたた寝や好し  9月13日 07時45分
3324 立ちのぼる夜気にみちたる秋の香にしばしの雨のありがたきかな 9月14日 05時02分
3336 名月に好きなワインを捧げては出て来い出て来いアマローネ!と 9月21日 18時27分
3340 皓皓と赤面もせぬ名月に菫もがなの漱石やいかに  9月22日 07時30分
3344 名月にみやびなきまで虫すだき雨月の今宵いずこへゆかむ  9月23日 09時03分
3350 潮入りの川を満たしつ初潮がせり上がりつつ小波立てり  9月24日 19時45分
3353 宵闇におちこちすだく声のしてすだくは虫も同じなりけり  9月25日 05時35分
3358 こしかたのひと日ひと日にいろあらむわが人生はさしてなにいろ  9月27日 08時44分
3363 花金の海辺の夜を疾駆するわが世とばかり集く若者   9月29日 13時43分
3368 盛秋にただひたすらに身をおきて虚ろなりせば心満たせり  10月1日 05時11分
3371 折々のそぞろの風に人恋しそは何故か深まる秋の  10月3日 20時54分
3376 ゆく径のたわわに赤き七竃すでにおさなき母たずねんと   10月6日 03時58分
3380 窯変のさまに染めかく柿紅葉いとさりげなく膳に添ひたり  10月8日 08時48分
3382 強かりき母のおもては優しかり黄泉への舞いを日々さぐるやに  10月10日 06時14分
3384 医の友は一病たりとも滅するとやよろず枯れるを待つも果てなき  10月11日 05時51分
3386 ことごとの言い尽くせぬは何故か伝えん意志の乏しき故か  10月14日 10時36分
3390 那智滝のたちまち変わる形相のそこによろずの神がおわすを  10月16日 19時24分
3395 久々に風邪なるものに罹りたりやすきに沈む日々を過ごしぬ  10月20日 09時52分
3397 大虹が東に懸かる夕暮れの西に明るき明日が見えり  10月21日 18時24分
3402 東西にかよう銀杏の大並木夕べ散りゆくさまは妖しき  10月24日 08時49分
3405 闌のたゆたふ秋の雲居をば数添ふやうに鳥渡りゆく  10月26日 20時19分
3409 ピラカンサの鈴なる枝の赤き実は誘うごとく風に揺れたり  10月27日 14時23分
3411 晩秋の鎌倉山の透く木々の実を啄ばみつ鳥が群れをり  10月29日 09時09分
3416 朝夕はそぞろ寒しの電話あり赤きイクラが追うように来り  10月30日 05時38分
3426 照りはえし四五株ほどのすすき穂が引込線の錆びを覆いて  11月4日 07時32分
3427 人見えぬ刈田は小春日和にて上総の海は光た走る   11月2日 05時52分
3430 巨きもののたうつ如くすすき野は霙るる風の澪を映せり   11月3日 04時54分
3441 占ひの何かことある思ひさへけふの夕べにみな忘るらん  11月6日 06時51分
3445 終なりていかなる情の残るにやわれ求めゆく人恋ふことを   11月7日 04時34分
3454 朽ちし葉のかさなり合ひし土くれにめぐりめぐりし命ありけり   11月9日 04時49分
3457 呑んべぃの だくれ姿は消えゆけり 通りの今はカップルの渦  11月10日 05時24分
3459 わが影のジャコメッテイに拍手して夕べベルトは鱈に腹せり  11月10日 18時22分
3462 季寄せなど残りわずかになりし今にぎははしきや手帳売り場は  11月11日 06時02分
3467 めくるめく壁はひつたふ蔦もみじはらりはらはら洒脱をしるや   11月12日 08時22分
3472 旭光が銀杏黄葉を煉りあげて黄金の如く北の大地に  11月13日 18時37分
3475 そのころはムンムンしてた名画座でいつも小さき自分が観ていた  11月14日 05時34分
3482 晩秋の鎌倉山のさび色をひとり愛でをり午後の日溜り   11月15日 05時35分
3485 初冬の九十九折りゆく箱根路のミラーに映るさびの色かな  11月16日 19時46分
3487 仲通り異国の文字のウインドウ黄葉仰ぎつ大手町ゆく   11月17日 10時30分
3491 改むる展望の塔江ノ島の一望にせむ広重の景   11月18日 05時45分
3493 見るもなき北の斜面のそこここに今は限りの櫨紅葉見ゆ  11月18日 09時23分
3499 冬ざれのしぶけし磯に竿ふれば雲の間にまに箱根連山  11月19日 18時31分
3502 小窓から暗きシベリヤ見下ろせば東かすかに帰る実感  11月20日 07時17分
3506 朝焼けに羽ばたく鳥の姿にも千羽鶴にも見えし冬雲   11月21日 07時28分
3512 暮迅しバス待つ角に柔らかきお好み焼きの風が流れて  11月24日 05時06分
3514 歌詠みに横好きならぬ縦好きも楽しみ召され評定なんぞは  11月24日 14時44分
3518 旬なれば怪魚もへちまも美味かろう吊るし鮟鱇つとに美くし  11月25日 07時35分
3529 リニューアルの住まいながらの工程を寸分乱さぬ職人仕事  11月27日 18時11分
3535 まだらにてはにかむような秋のいろ森はやがては光をまとう  12月2日 20時03分
3544 坦らかな遥か点なる直線の落葉松の並木道行く 11月30日 19時02分
3549 昼下がりランチョン盛るレストラン集くミセスの何故に溌剌  12月1日 05時24分
3552 乳母車に一対の子を乗せ坂を押しあがらんとうら若き母は   12月2日 06時10分
3563 老い成りてすでに失せたる表情の眼の奥に性を宿せり   12月3日 19時14分
3565 老いなりてあはひに母は母をぬぎ老いとげなむと独りあはいに  12月4日 05時40分
3580 老いなりてベッドの母は丸く居て冬の光に浮かびつ消えつ  12月5日 06時43分
3587 室内に応えて咆える犬の来て老父の声は幸に弾めり  12月5日 16時25分
3589 老いなりてベッドの宙に声もなく窓に向かひて母は埋もれり  12月5日 19時39分
3592 老父からお前来る日はしばれるぞ雪もふるぞと電話たびたび  12月6日 06時50分
3594 右膝が今朝も痛むと冷ゆ朝の電話の声の痛ましきかな    12月6日 12時30分
3601 右からの木枯らし頬にけやき道おなじ記憶をどこかにさがす  12月7日 04時53分
3617 ことごとく繁りていたる葉をぬぎて凛々として寒風に立つ  12月9日 19時48分
3623 同窓の同郷なりし何がしと不況の故のセールス多き  12月10日 06時06分
3625 ふるさとの高校卒業五十年記念をやると言いし友逝く  12月10日 07時55分
3630 初雪が屋根の個性を白くして冬の化粧やわが街の顔   12月10日 12時38分
3634 小雪まふ小谷(やつ)の道はくねりゐてつまるあはひはいよよ冬色 
3636 淡き日に瓦模様が浮き出でて積もりし屋根の雪が解けゆく  12月11日 05時32分
3641 年を祝ぐひととせを経し水茎に故人を偲びつ春遠からじ   12月11日 10時23分
3644 枝先に少し残りし初雪は朝の光にプリズムとなる   12月11日 17時47分
3647 音もなき白き真霜の平らかにしばれる朝に故郷を想う   12月11日 21時21分
3650 寒天のあれがスバルと指し示す北の都の老ドライバー   12月12日 05時29分
3652 二筋の轍をなぞり雪道をくだり行く背が息をおきゆく  12月12日 09時19分
3660 退きてのち初の師走を迎へなむゆるりと時の過ぎゆくを知る  12月12日 22時35分
3665 早暁に詠まんとすれど心なく歌は東雲見ゆる後なり  12月13日 06時29分
3669 年明けに再びアジアの開拓に夫婦茶碗の老いたる友が  12月13日 09時05分
3671 ほそ道を学ばんとしてひも解けば易く芭蕉は尽くせぬを知る  12月13日 09時21分
3675 つれづれに旅に何処と思えども思うまにまに時は過ぎゆく  12月13日 10時35分
3681 ひとひらの葉もなき梅の枝先にすずめ群れをり日に当たりをり 12月13日 11時40分
3683 点になるほどの高みに舞う鳶を見上ぐるわれは師走に向かう 12月13日 12時36分
3686 寒風に海ははるかに澄わたり波ははるかな伊豆大島へ  12月13日 13時16分
3689 冬ざれの島にクレーンが聳え立ち新たな塔を普請しをりて  12月13日 15時48分
3691 寒風に茶髪の鳶のエィ・オーと組みあがりゆく東京ミレナリオ  12月13日 16時35分
3694 来しかたの五百のうたを詠みつらねげに千日を笑むはやわが  12月13日 20時46分
3710 カラカラと初氷塊を蹴りてゆく登校子らの高らかな声  12月14日 18時47分
3719 きのふけふ師走にしかとめぐらせばよきことばかり思ふはやわが  12月15日 09時17分
3729 大年にむかふ日かさねしどけなくおもふこと有りまた無くもあり  12月15日 20時24分
3734 風邪気味にかまけて吾は所在無く師走は中の五の日を過ごす  12月16日 06時12分
3739 賀状先閲しをりたる名の中に黄泉へはふりし友ありにけり  12月16日 10時33分
3751 幼子の手のポップコーン狙いつつ鋭く鳶は羽ばたきをりて  12月17日 08時19分
3761 艦砲に壊滅したる故郷はわがトラウマに折々の夢   12月18日 05時48分
3774 年の瀬に紅あざやかな六地蔵にぎわう街をいつものように  12月20日 05時42分
3794 車窓から遠近に見ゆ点滅の聖樹に今日の幸せありて  12月23日 19時05分
3805 山影は墨の如くに滴りて光芒はるか北の星辰  12月25日 10時56分
3814 決戦の見えぬ戦の無機なるは道化も何も無きが如くに  12月27日 06時21分
3825 スコールを牛ひくアジアンレポートに銃後の貧しきときを思いつ   12月28日 09時40分
3832 けふてふつくにあまりし九にをり去年となりける今年にわれは  12月29日 09時08分
3837 過ぎたるは猶のバブルを過ぎてより幾たびなりや大つごもりは  12月30日 06時22分
3842 わが天に唾棄することの愚かさを仰臥の後の冷汗に知る 12月31日 06時28分