764 | 爽涼の崎へだつとも小波に君をばゆかし思ふはやわが | 9月10日 18時21分 |
787 | 藁蓑の頭巾纏いて牧草を暗きサイロで黙々と踏む | 9月19日 15時03分 |
791 | 雛壇の古き団地の秋風に響く槌音二世代普請 | 9月25日 14時18分 |
795 | 恥らいてとくべつな日の富士の山雲間に見ゆる初の白雪 | 9月28日 07時49分 |
797 | 江ノ電のレトロ車両の窓に寄る若き二人の瞳燃えけり | 10月3日 05時23分 |
799 | 停電に悪夢の灯火管制のトラウマ払いゆとりもて待つ | 10月3日 20時46分 |
807 | 空青き旗翩翻と駒沢に戦後終りし十月十日 | 10月9日 14時25分 |
810 | 欧州の古き街並とりどりのコインに思う旅のいろいろ | 10月12日 09時09分 |
813 | ひっそりと戸塚の宿の小碑文真っ赤なポルシェ風巻きてゆく | 10月15日 08時18分 |
817 | 生垣の錆び色深き剪定の陰に深紅の帰り花見ゆ | 10月17日 14時17分 |
821 | 花筏吹き重なりてただよへり愛はしさまに自在うばはる | 10月18日 20時18分 |
825 | さざめきを渚の潮に秋の朝誓いはなくもまたの出合いを | 10月19日 07時08分 |
833 | 大群を上目に見やる五六羽の渡りいずこへ茜雲果つ | 10月20日 22時41分 |
837 | 焼黍にふるさとを嗅ぎかぶりつく見やるテレビに初雪の報 | 10月21日 08時20分 |
844 | 北便りルビーの如き弾性体炊きたて飯に盛りてかきこむ | 10月23日 05時20分 |
850 | 三十路きてすきま風しむ友ありぬ虚心の秋に心起てしか | 10月25日 09時22分 |
853 | 現世のよろずことごと過客なる日々の吾こと輪廻万象 | 10月25日 20時13分 |
862 | 往昔の万事思へば吾今を心澄みたり秋のあけぼの | 10月28日 05時37分 |
866 | おなじ道おなじ時刻に「おはよう!」とウオーキングの清々しき人 | 10月29日 07時04分 |
868 | 残菊に雨を重ねし水茎のあまたの句より特選となる (ぽっぽさんおめでとう ) | 10月29日 17時17分 |
870 | 白兎なる社の御籤大吉と顕わの磯をとび渡りゆく | 10月30日 11時50分 |
873 | 書を閲つ不乱に過ぎて東雲の企業戦士の友の懐かし | 10月31日 14時42分 |
877 | 幾年の名刺の束にたばかりて手にとる葉ごと思ひ廻らす | 11月1日 05時16分 |
881 | 桜木の錆び深まりし段かずら朱き社殿を遥かに拝す | 11月2日 04時21分 |
885 | 千年の巖の如き公孫樹黄葉に化して新春を待つ | 11月2日 16時23分 |
891 | 歌よめば寂しさあふること多き君をばゆかし思ふはやわが | 11月4日 08時40分 |
898 | 諍いて何かをいえば済むものを無言のままに箸をすすめる | 11月5日 09時58分 |
901 | 老境に己の何を語りしか故なきことの何を語らむ | 11月5日 19時02分 |
908 | 山城の跡なる谷(やつ)の山柿の朱の憐れや猛きもののふ | 11月7日 13時31分 |
913 | 山肌に数多の皺の悍ましき灰降り続き島は荒れゆく | 11月8日 04時48分 |
918 | 幾ばくか勁草見ゆるロカ岬いにしえ人の夢や遥かに | 11月9日 10時24分 |
926 | 気遣ひて顔をつくりて時過ぎて一人真夜に深く息づく | 11月11日 06時01分 |
928 | 酒を呑み高吟しばし別れゆく淋しがりやが集う友垣 | 11月11日 18時18分 |
931 | ワイエスの荒野の家の連作に青き心のあふれるを知る 83歳のアメリカの画家 | 11月12日 13時47分 |
932 | 青年の心のままに躍りいて夕べ静かに時の過ぎしを | 11月12日 19時02分 |
936 | 大円の真っ赤な今日の太陽にまた青年の如き心に | 11月13日 08時00分 |
941 | 幼子の指に点りて黒き眼に線香花火映りて滅す | 11月14日 04時24分 |
946 | 権力の畏れをしらぬ高声に衆の心は沈みゆくなり | 11月14日 14時22分 |
952 | 白山の風に豊かな稲架の波衆に声なき葬送の列 | 11月15日 18時37分 |
957 | 魂のドンコザックのハーモニー初めて聴きしときの感動 | 11月17日 05時36分 |
961 | うつろひて鎌倉山の緑錆ふ時うつ鐘のひくく響けり | 11月18日 06時01分 |
965 | 新雪に裏大の字にうつぷして冷たき雪に呼気あたたかき | 11月19日 04時24分 |
971 | 微かには同じ想い出何処にか老眼鏡で遠くをみやる | 11月20日 06時06分 |
976 | 現しくも移し心も弁へぬ贖ふも知らぬ青き道心 | 11月21日 05時40分 |
978 | 何の色永田の屯を闊歩する裸の長の残るシャッポは | 11月21日 11時11分 |
984 | 先見えぬ時代の処処のつむじ風カウントダウンの二十世紀は | 11月22日 05時49分 |
990 | 半天に闇の残りし小径ゆくウオーキングの交わす言の葉 | 11月23日 10時09分 |
1002 | 老父母の昔語りのとつとつと吾懊悩の氷柱ゆるみて | 11月26日 19時03分 |
1008 | ベンツより小さき戦車椰子蔭に世紀を越える赤きキャタピラ | 11月28日 05時54分 |
1013 | 残りたる二十世紀の暦には水を湛へし黒部峡谷 | 11月30日 05時04分 |
1018 | 肉月の偏もつ文字を羅列せり確かなるかや我肉体の | 12月3日 05時46分 |
1021 | うら若き僧の眼の一点にゆらぐともしび砂の曼荼羅 | 12月3日 21時14分 |
1027 | 大脳の何処かにあるは確かでも錆びし回路の情けなきこと | 12月5日 06時00分 |
1031 | 壁崩る1989年とフランスの1789年の嵐を思う | 12月6日 13時32分 |
1035 | 漆黒にゆらぐ篝火白拍子二人静の舞やとけゆく | 12月7日 04時53分 |
1039 | ボタ山に幼き夢の一もんめ酔へばかの地をかたる友あり | 12月8日 05時32分 |
1048 | 混迷は天誅なるか昏迷の二十日を余す二十世紀は | 12月10日 05時42分 |
1055 | 泡立草手向けむ花にあらねども淡き冬日の枯野に燃ゆる | 12月11日 04時41分 |
1106 | ぽろぽろと崩れさるもののみ見ゆる人智悲しき二十世紀は | 12月20日 05時17分 |
1111 | 華やかなイルミネーション鏤めしかって海なる「青べか」の沖 | 12月21日 09時08分 |
1115 | 外套の若きドアマン寒風に若き二人の荷を捌きをり | 12月22日 05時25分 |
1119 | 大網の手に余りては漁ならむ百尺竿頭一歩進まむ | 12月23日 06時46分 |
1121 | 雪しまき逃れ逃れて山小屋にまんじりもなき光る朝明け | 12月23日 16時49分 |
1124 | ポンポンと言葉かさねしモンタージュ リズミカルなる修司駆けゆく | 12月24日 05時23分 |
1127 | 朝浜の潮のあとの黒々と寄すさざ波の白きソナチネ | 12月24日 15時12分 |
1129 | イヴの華BBCポップのフィナーレ電話をとれば妹の入院 | 12月24日 19時29分 |
1133 | 安息の天の恵みと思ひ伏し笑み満面の清し迎春 | 12月25日 11時42分 |
1144 | 千年のうつりありしも万象の古今にうたふもののあはれは | 12月27日 05時51分 |
1147 | 残る葉を嬲りて過ぐる木枯らしが小枝にそっと春を醸せり | 12月27日 18時49分 |
1150 | ゆっくりと透く寒空をけや木道淡き西日を北に向かいて | 12月28日 04時43分 |
1156 | ひとりゐてこころ許なく打つキィの着信メール無きを知りつつ | 12月29日 09時48分 |
1158 | 世のことの不覚のながれ止めずなり何ぞ不易か行く年おもふ | 12月30日 05時47分 |
1159 | ならはしの世のことごとの離れなむも清げなるかな幤の門松 | 12月31日 05時34分 |
1161 | 古里も皇御軍(すめらみくさ)も遠火事に返歌などして思ふやがわが | 12月31日 10時36分 |
1166 | 東雲の明けまく惜しみ耀ひて高みに鳶の初なきの声 | 1月2日 14時45分 |
1170 | 揺れうごく心の襞の眼差に何ぞ悩みを口に出さねど | 1月4日 05時38分 |
1172 | 幾たびもおくのほそ道たどりきし今年の友はかの山寺に | 1月4日 18時48分 |
1176 | 凍て果てし白き光りに昵みいしダイヤモンドダスト輝ける朝 | 1月6日 16時18分 |
1179 | 赤冨士の江ノ島橋に陣なせるシャッター音の波に響けり | 1月7日 10時25分 |
1183 | いく世へむ東に天地遥々のモンゴロイドの野ざらしを思ふ | 1月8日 09時36分 |
1187 | ウラルから南に下りマジャールは黒き瞳に星を数へつ | 1月9日 05時32分 |
1193 | アメンボの群がる如く波立てば冷たき海にサーファー若き | 1月10日 06時46分 |
1200 | おちこちの車列ぬひゆくオートバイ春着の街の若き急便 | 1月11日 05時25分 |
1202 | 湾岸のルート狭しと連なりてトラック繁く北に南に | 1月11日 08時12分 |
1206 | 初空の十勝連山神さぶる厄の世の清まはるらむ | 1月12日 08時12分 |
1211 | 水仙の青き剣先庭隅の憂きも惑ひも天に吹きだす | 1月13日 04時53分 |
1228 | 大皿のブイヤベースの蟹の色青くかがやくコートダジュール | 1月15日 12時07分 |
1233 | 分水の道に佇み降る雪の行方を見遣る遥かな海の | 1月15日 19時35分 |
1239 | 参道を西に向かいて潮騒に伊豆大島を遥か望みて | 1月16日 08時02分 |
1243 | 荒海の岬へだつとも風かよふ秘めし心の夢にのせなむ | 1月16日 20時41分 |
1252 | 追ひかける夢に魘され盗汗の遠くなりけり夢多き頃 | 1月17日 16時13分 |
1255 | 凍てつきて音もはてなむ星の夜の赤き熟柿の舌に溶けゆく | 1月17日 18時32分 |
1259 | ほのぼのと寡黙の時の過ぎゆきて口に運んだ冷めたコーヒー | 1月18日 06時23分 |
1270 | 遥かなる干潟の風に僧院の尖塔そびゆモンサンミッシェル | 1月19日 14時23分 |
1274 | 夕映えの黄金豊かな冬磯に佇み吾はひとり愉しむ | 1月20日 06時52分 |
1276 | はらはらと万花こぼれる北の春石狩川は龍の如くに | 1月20日 08時43分 |
1282 | 遥かなる思ひつめたる山稜に思ひのしかにいつぞ立ちなむ | 1月20日 18時16分 |
1288 | 今とても同じからずや歳々のことごとすべて遠くなつかし | 1月21日 05時23分 |
1309 | 訪れしサイパン島の夕映えの珊瑚の浦の美しきかな | 1月25日 06時03分 |
1314 | かすかなる雪解の音のトレモロに春待ちわびし幼き日々を | 1月26日 15時09分 |
1318 | ごうごうと吹雪荒れたる鎌倉のかの雀らのいずこ宿りし | 1月27日 12時06分 |
1320 | 紅梅の雪残りたる枝々にかそけき春の色のともれり | 1月28日 08時47分 |
1322 | 影冨士の厳かなりし浦に立つ雲か霞か朱に染まるを | 1月28日 19時33分 |
1328 | 焼酎の湯割りを愛でて食毎に和む心の父の卒寿は | 1月29日 13時24分 |
1331 | 夏祓きしみ微かに巫女を待つ廊の緑の涼しかりけり | 1月30日 08時11分 |
1333 | 冴え冴えと波にただよう月光の胸に迫りてわれは祈らむ | 1月30日 14時51分 |
1337 | 梵鐘の午前六時の渚にて鐘を見たしと遠回りする | 1月31日 16時06分 |
1344 | 東雲のやうやう朱になずみきて山端をいずる一閃を待つ | 2月1日 08時28分 |
1348 | さりげなく虚心にあらむわがこころ惑うことなき日々をおくらむ | 2月2日 14時11分 |
1355 | ユトリロの肖像描くヴァラドンの油彩に母の思いあふれて | 2月3日 15時33分 |
1357 | 遥々の唐の縁の陶片に和賀江の跡の春の大潮 | 2月4日 09時26分 |
1361 | 奢りきて二十世紀のわざわいの根源なりき浅き人智は | 2月4日 18時16分 |
1370 | 空狭き小さき谷(やつ)の湧水の清き流れに時宗おもふ | 2月6日 05時49分 |
1377 | 幾重にも雪に埋もれしぼたの跡メロンハウスに往時をしのぶ | 2月7日 11時41分 |
1382 | 夜更けまで霙打ちたる朝ぼらけいよよ紅さす窓の梅が枝 | 2月8日 08時12分 |
1384 | 小春日の渚に寄する小波の真白き潮のささやきを聞く | 2月8日 09時39分 |
1388 | 冬枯れの小径たどりて眺むれば絵島かすみて錆びもとけ初む | 2月9日 07時03分 |
1397 | まろびゐてしどろにありし野仏の冬日のなかにしづみてゐたり | 2月10日 12時48分 |
1399 | とりどりのアロマに酔いしティスティング二月の夕べワインにあそぶ | 2月10日 15時41分 |
1402 | ユニクロのペアールックのきぬぎぬの時惜しむかに春磯に立つ | 2月11日 11時02分 |
1407 | いにしえの法王をりし城門の夾竹桃の盛んなるかな | 2月12日 05時48分 |
1410 | 流離ひし草にしのぎし乞食の何をか得べし衆に無きこと | 2月12日 19時34分 |
1416 | 子らの声朝な夕なの時ありし宅地の冬の静かに暮るる | 2月13日 07時56分 |
1419 | 徘徊の黒き原潜小船打ち海の若人未だ帰らず | 2月13日 20時00分 |
1422 | お前がね生まれたときは小さなで産湯でねそうすやすや寝てね | 2月14日 21時44分 |
1425 | 孫たちも藍の浴衣でおばあちゃん日永嬉しき健康ランド | 2月15日 06時35分 |
1427 | 延々とレジに列なすカルフール三色の旗子らの瞳に | 2月15日 10時18分 |
1437 | めぐりきて惑ふ間となく長となり惑ひし日々の虚しくあらむ | 2月16日 13時09分 |
1443 | あはゆきのなべて消へゆくことの由ことはしばしの枝にむつまむ | 2月17日 10時37分 |
1445 | 遥々の伏流清き柿田川冨士の白雪幾世隔てむ | 2月17日 18時50分 |
1504 | びょうびょうとそれと覚しき春疾風生きとし生きるものや目覚めむ | 2月28日 10時36分 |
1509 | 明け方のひととき強き春の雨花粉のとばぬことのうれしき | 3月1日 06時23分 |
1513 | 潮溜まり磯広々と春潮の小網をかざし子ら戯むれり | 3月2日 06時03分 |
1516 | さざ波の白く広がる朝浜ににまごうばかりに立春の雪 | 3月3日 05時37分 |
1518 | しらじらの虚言の多き国長に衆の心は春を待つのみ | 3月3日 18時40分 |
1520 | 吹く風の鳴りくぐもりし春雷の遠くにゆきて鳶の行き連る | 3月4日 12時46分 |
1525 | 睡蓮のいまだ目覚めぬほとりにて猛きもののふ思ふはやわが 鶴岡八幡・源平池 | 3月5日 08時00分 |
1527 | 待ちわびし門の守宮の目覚めらむ出でよ出でよと仰ぎみる夜半 | 3月5日 14時03分 |
1529 | はえば立て笑いて泣けば可愛いと欲しきものなど欲しきものなど | 3月5日 19時50分 |
1532 | 貧にたへ懊悩しつつ貧にゐて佐藤佐太郎歌詠みつげり | 3月6日 05時53分 |
1535 | 折々の心にふるる生業の息つきなるか同胞の歌 | 3月6日 10時34分 |
1538 | 濁流にわが竿さしつ現世の清き澪へと虚心にゆかむ | 3月6日 13時54分 |
1542 | 春や春除隊の父のゲートルを汚せし泥に思うはあの春 増殖をよみて | 3月7日 05時41分 |
1547 | 折々に孫や如何にと問う妻の心は吾子を思う言の葉 | 3月7日 19時14分 |
1551 | 処女雪に埋もれもがきし青春の痛みも今は美しきもの | 3月8日 09時10分 |
1559 | 満るほど何かわびしき月の夜のもとなことなど思ふはやわが | 3月9日 18時34分 |
1563 | 春暁の未だ静けき裸木の精を湛ふはただに嬉しき | 3月10日 05時33分 |
1566 | 待ちわびて風邪と花粉に襲われむとはいえ春の日永にあれば | 3月10日 16時03分 |
1571 | 明滅の絵島の灯り遠くみて鎌倉山に初音追ひきく | 3月11日 05時47分 |
1573 | なにもなきはてなき空と風にゐてしばし心の安らぎをえむ | 3月11日 08時49分 |
1577 | 目の前の今は止まりし鞦韆に軽ろく手を添へぬくもりを追ふ | 3月11日 14時24分 |
1578 | ふららこと春の余白を詠みをりて互いのキィは同時に打たる | 3月14日 17時40分 |
1583 | 春浅き小さな街の朝市にエネルギシュな笑いざわめく | 3月12日 05時35分 |
1587 | 同胞とモントリオール議定書の思ひただしつ未来にかけむ | 3月12日 13時26分 |
1593 | あっかるくぶっきらぼーにひょうきんに振舞う青き疼く心根 | 3月13日 08時15分 |
1597 | 朝なさなとく生業を詠みつぎて日暮に明日を思ふやはわが | 3月13日 20時11分 |
1601 | 現世のうつろひわたることごとの冨士にかたぶくあしたへの月 | 3月14日 15時59分 |
1604 | をちこちの御符を纏ひし青年の街をたばしる速便単車 | 3月15日 08時22分 |
1610 | この海の光りと風の戯むるをいにしへ人の残せし歌に | 3月16日 05時46分 |
1621 | なつかしき三浦大根輪に切りてザックザックと疾く頬張りぬ | 3月17日 19時31分 |
1632 | 尋ねきて語りつがれし元禄の赤穂の志士の思ひやいかに | 3月19日 07時47分 |
1637 | 神秘なる雌雄の契り至高なる生(あ)れし赤子の神秘なるかな | 3月19日 20時22分 |
1667 | おぞましく朽ちし巨木に躍動す虫けらという尊き命 | 3月24日 20時15分 |
1670 | をさな木の恥らふごとき初心なる青き蕾みにしばし心とどめむ | 3月25日 09時06分 |
1673 | 凝らしても吾におぼろなむら雨をものの芽よろずしかと待ちける | 3月25日 19時09分 |
1679 | きはまれる悲しみ故に閉ざすらし固き思ひの睦るを待たん | 3月26日 06時23分 |
1682 | 交はりてはじめて知るや吾が成せる日々ことごとの色も匂いも | 3月26日 13時40分 |
1686 | 石仏の跡形もなき岩窟のいにしえ人の祈りはあらむ | 3月27日 07時53分 |
1690 | 春の空のくぐもる光りうけをりて毛細管にめぐる血をおぼゆ | 3月28日 10時48分 |
1696 | 虚しさの淵をいでばやおりおりの絵と人間の『絵のなかの散歩』 | 3月29日 09時06分 |
1699 | 雲閉じて今にも雨の来るらしき花に冷たき風も吹き初む | 3月29日 20時40分 |
1703 | 友禅の賀茂の清みに紅色のよどむ岸辺に落花舞ひけり | 3月30日 14時42分 |
1711 | 満開の花に小リスが群がりて枝から枝へ小鳥のやうに | 3月31日 06時27分 |
1713 | 海なりのとほくきこへしあばらやの花めでくまむながき斗の酒 | 3月31日 16時31分 |
1717 | 渚にてさざ波白くよす砂にふる雪きへて春遠からじ | 3月31日 21時07分 |
1721 | 築かれし渚の砂のマンションのまだそのままに波や寄せくる | 4月1日 17時18分 |
1729 | それぞれの迎へる春はとりどりの仕立て直しの衣まとひて | 4月2日 20時26分 |
1731 | 新入の若き決意の面々と夢をともにし日々にすすまな | 4月3日 06時51分 |
1735 | 廃材の残る更地にさくら散る生垣荒れて今は声なき | 4月4日 06時45分 |
1742 | 北の野のまだ覚めるやらぬ雪の間のささやく風に散る花もなき | 4月5日 14時19分 |
1748 | うらうらとただよふごとく散る花に此岸にたくむ吾をわすれむ | 4月6日 19時10分 |
1755 | 山峡にふる花びらの幽けしや沈金のごと岨のせせらぎ | 4月7日 13時10分 |
1759 | ゆかむとす旅のすがらの手合いなど思ふなどして予ねてたのしぶ | 4月7日 19時14分 |
1763 | あさの日に恥かしげなる春の山夕べに深き憂ひをたたふ | 4月8日 06時31分 |
1767 | 花過ぎしだあれもいない鞦韆のふいになつかし風にゆれるを | 4月8日 12時58分 |
1770 | よせてまた返へす潮間の小波の潮の満てるは猛けるが如し | 4月8日 19時17分 |
1774 | ジェット機の影落つ春の山間にやや斜交いに煙たなびく | 4月9日 07時52分 |
1777 | 夕空の朱に遊弋せし鳶の仰ぎし吾をいかに思ふや | 4月9日 14時22分 |
1781 | 新芽なす谷のあはいのそこだけに色をまとひし山桜かな | 4月10日 13時36分 |
1788 | 傷癒へてそなたの傷を思ふときそっとなぞるは壁のイニシャル | 4月11日 19時52分 |
1792 | 故郷で「す・き・で・す・・さ・つ・ぽ・ろ」口ずさむ疼く傷など無くもナツメロ | 4月12日 05時33分 |
1807 | 黄塵のセピアに暮れし北の空西の浄土に思ひはすなり | 4月15日 18時48分 |
1814 | 鏑矢を番へて春を疾駆する凛々しき射手の風にさやけき | 4月16日 13時41分 |
1819 | 生業に追はれ追はれし現世のおきそひ末は歌を詠まばや | 4月17日 20時51分 |
1828 | 思ひては言ひたきことの多かりきそはなかなかに難きことなり | 4月19日 08時16分 |
1830 | ずっと前大きな洞にささやいた「ヒ・ミ・ツ」は春の芽吹きになりて | 4月19日 19時39分 |
1834 | 西からの逆風吹けばその雨は分水嶺の東にゆかむ | 4月20日 15時01分 |
1838 | したたれる濁れる水を手の平に防空壕のうるわしき春 | 4月20日 23時34分 |
1844 | 稲村の蹈鞴に吹きし黒砂は際殊などの因果を知るや | 4月22日 06時33分 |
1852 | 仏蘭西の古城の端の館には狩を証せし鹿の角など | 4月23日 11時47分 |
1855 | 磨かれしロビーをかける幼子の手より離れし風船が浮く | 4月24日 06時29分 |
1861 | 思ひても叶はぬことの多かりき夕焼け雲にそはと思へる | 4月25日 18時43分 |
1864 | 江ノ島の西の高みに佇みて冨士の茜の没するを見ゆ | 4月26日 09時39分 |
1869 | 錆びいろをまとひし山がたちまちに視界くまなき光る緑よ | 4月27日 05時11分 |
1877 | 病室を出て盛んなる万緑に心弾みし幼き時を | 4月28日 18時27分 |
1880 | 水金地火木土天海冥と朗誦しては得意顔の子 | 4月29日 05時03分 |
1882 | 音なくも血のつながりし子の故になにか届くも届かぬも良し | 4月29日 19時07分 |
1891 | 花便りありてかの地を思ひたり受験準備の厳冬の日々 | 5月1日 04時42分 |
1899 | おとといが峠だったの言の葉を信じて友は病克せり | 5月3日 05時32分 |
1903 | めのまへの青き芽吹きのあまたなるゆるりあゆみて語りかけばや | 5月4日 09時11分 |
1907 | ながむれば鳥わたりゆく京の空なほに見ゆれどみな筋違に | 5月5日 05時43分 |
1910 | いにしへのもののふの道たどりては孫とかたりし昔々を | 5月6日 09時09分 |
1915 | いにしへはおほ寺なりし山門の影を出づれば己が月影 | 5月7日 05時15分 |
1920 | ひだり手に成田空港見下ろせば玩具のような機々犇めきて | 5月8日 04時50分 |
1925 | うつし世の聳ゆるものの朧たりめぐりくるらし春をかぞへむ | 5月9日 07時40分 |
1928 | ゆく春のアンテナわたる朝なさな鳴くうぐいすの哀しくもあり | 5月10日 05時22分 |
1936 | 春風に淡紅色のアンランジュ月に香りて熟しゆくなり | 5月11日 11時31分 |
1943 | 立錐にひしめく星に無限をば思ひ明かせし青春ありき | 5月13日 04時55分 |
1971 | むらさきの衣の裾をひくように花鉄線はそよ風の中 | 5月18日 14時36分 |
1974 | ひっそりと葉かげに白き柚子の花しかと香りて秋を凌げり | 5月19日 18時14分 |
1985 | いぬねこを好きになれぬはトラウマか玩具ごときも吾を避けゆく | 5月23日 07時41分 |
1994 | 暮れかたの梅雨をきざせし急坂を何買ふと無くコンビニへゆく | 5月25日 15時52分 |
1998 | 高みより梧桐の淡き花の雲ここは異国ぞ北京郊外 | 5月26日 16時08分 |
2001 | 勁草に船影ぞなきロカ岬地果つところと吾も思ひき | 5月27日 04時11分 |
2016 | 新ジャガの煮っころがしを皮ぐるみ口にほふれば生きてる実感 | 5月31日 05時07分 |
2029 | かすかなる路傍の風にどくだみの夕陽にゆれし白き十字は | 6月2日 17時51分 |
2041 | たそがれに残りて白く輝けるなほまぼろしかくちなしの花 | 6月5日 19時23分 |
2048 | 朝なさな露を纏ひて紫陽花は色あざやかに日々に満ちゆく | 6月7日 04時42分 |
2061 | やさしさが思ひがけなきトラウマにそは橋叩くことのはじまり | 6月9日 18時31分 |
2087 | 目礼を重ねし四季の朝なさな路地ゆくひとの名は知らねども | 6月18日 07時35分 |
2103 | 一対の角を具えし鬼出でて能楽堂にしわぶきも消ゆ | 6月22日 13時48分 |
2117 | モバイルのアンテナ渡り鶯は朝のお勤めわがもの顔に | 6月26日 06時40分 |
2125 | 梅雨雲が眼下に見ゆる機窓から遥かに湧きし夏雲も見ゆ | 6月29日 09時28分 |
2131 | 眼下には陸と海との二色が見え隠れしつ襟裳へ向かう | 6月30日 13時14分 |
2139 | 点ひとつただよふごとき蛍火が真闇の宙にやがて止りぬ 昨夜の蛍狩 | 7月1日 05時02分 |
2166 | 朝なさなカルシウム剤嚥下せる妻癒さまく骨粗鬆症 | 7月6日 07時47分 |
2171 | 東雲のはるか夏海を凝視せる若き男は身じろぎもせず | 7月7日 07時56分 |
2175 | 夏海の水禍の子らの痛ましき高波巻ける遠き台風 | 7月8日 08時21分 |
2180 | 時流れ今の子らはという吾も虹をかけんと駆けし時あり | 7月8日 20時49分 |
2184 | 腰越の浜みる露地の小仏に弔ふ花のたれか手むけむ | 7月9日 18時54分 |
2196 | いつの間に小さくなりし父母が目を見開きて吾を送りぬ | 7月14日 11時08分 |
2202 | 構造を改革せむと口々にその言の葉の今は虚しく | 7月17日 09時24分 |
2209 | 糾へる縄の如しとすべからく思ひて沿はぬ日々を見遣りぬ | 7月19日 05時14分 |
2215 | 暑気残る夜の浜辺で若者は眠るを忘れ時を盛りぬ | 7月22日 16時47分 |
2236 | 果てまでも埋め尽せる向日葵は焦がれし如く黒々として | 7月30日 11時39分 |
2248 | 午前四時波のまにまに限りなく蒼くまたたく夜光虫群 | 8月3日 18時24分 |
2252 | 患ひし目にはかたしき青空の忘れ難きは終戦の日の | 8月6日 04時47分 |
2269 | 3掛ける7変速の自転車を押して坂ゆく歯車見つつ | 8月11日 17時28分 |
2271 | とりどりの夏着のままに自転車で地の老人が釣りに集まる | 8月13日 04時35分 |
2285 | 大の字の三画の尾ののびやかに真闇を焦がす京の送り火 | 8月18日 04時18分 |
2293 | 外堤に高波くだけ鳴動しそそり立ちたる潮の大壁 | 8月22日 05時25分 |
2301 | ねがはくは心静かにおもむきて枯るるがままに黄泉路たどらむ | 8月25日 16時20分 |
2305 | 凌霄のこぼれる朝に露ありて散り敷く門に暫し吾あり | 8月28日 04時34分 |
2308 | 茶髪子も禿頭なりしいつの日か地黒き髪を懐かしむらむ | 8月29日 07時04分 |
2317 | 山峡の今は静けき巨大ダムロマンをかけし男たちの碑 | 9月3日 04時25分 |
2327 | 早暁の霧払われし丘陵の遥かシャトウに葡萄連なる | 9月7日 13時41分 |
2332 | 重陽のいはれ尋ねし孫たちはスリーナインは銀河鉄道の夜と | 9月9日 16時51分 |
2337 | 匂ひたつ醸しところの息おもふ月を祭りし御酒捧げゐて | 9月11日 07時38分 |
2348 | 逆縁かブラウン管に音もなく崩れゆくなり摩天楼二つ | 9月14日 18時41分 |
2354 | 濡れ衣もいつしか渇くそのときに賽はいずれにふられしことか | 9月16日 18時55分 |
2358 | いつの間にか撤収されし海の家いま砂浜は自然のままに | 9月17日 04時37分 |
2368 | 妻ととる夕餉にふっと違いては酒肴のうまき味は戻らじ | 9月21日 03時59分 |
2380 | 初雪に威を正したる不二の嶺紅の入日にほんのりとして | 9月25日 05時03分 |
2399 | 有り明けの雲むらさきに茜さすまだきにうすき十六夜の月 | 10月3日 15時43分 |
2404 | 朝露に浜砂しかと湿りゐて秋深まるを裸足の吾に | 10月5日 06時10分 |
2413 | 磯釣りの腕伏す日々の長かりき友陶然の石鯛ゲット | 10月8日 17時58分 |
2416 | 牛乳をコップに呷る朝なさな骨粗鬆症避けむと妻は | 10月10日 05時54分 |
2424 | 澄みわたるパティオの空に二人してバルーンに託す夫婦の誓い | 10月13日 19時33分 |
2429 | 回廊を鹿の髑髏でうめ尽す誉れ高かる貴族の館 | 10月17日 05時18分 |
2438 | 両親に祖父母二組七五三スキップする子のシックスポケット | 10月22日 07時59分 |
2446 | 秋浜の誰が丹精の砂の家壁の小窓に夢がただよう | 10月24日 15時44分 |
2450 | 遥々のとどろく音に欹てて久しきことの秋雷と知る | 10月27日 09時22分 |
2456 | 久しきやかな三文字の詠人の明るき歌に弾む心を | 10月30日 14時19分 |
2468 | シャンツエの如く途切れし新設路バーゲンの旗反対の旗 | 11月3日 10時45分 |
2470 | 嬉々として羽織袴の小公子本殿を背にガッツポーズを | 11月4日 06時22分 |
2490 | 枯葉ふるごとく落ちゆく爆弾は枯葉も見えぬアフガンの地に | 11月10日 06時22分 |
2492 | 物差しで引きたるごとき国境は二十世紀の恥の遺跡か | 11月10日 09時10分 |
2498 | 釣磯へ絵島の橋をゆくわれに冨士を仰げと有明の月 | 11月11日 16時40分 |
2508 | 戦乱にはわが身の明日の実存をただそれだけを欲し求める | 11月12日 19時46分 |
2515 | 背まろく小さくなりし母の手が日に照らされて白く大きく | 11月13日 07時41分 |
2547 | 絵ノ島の明けもてゆける冷ゆ磯にあまたの星を驚きつみる | 11月19日 04時48分 |
2552 | 凪わたり磯の根見ゆる冬潮に銀鱗鈍き小魚の群れ | 11月19日 19時15分 |
2562 | 透きとおる十一月の夕まぐれほのかに富士は赤く聳える | 11月22日 05時03分 |
2567 | さはやかに老ひゆく道をめぐらせばわが歳月は夢にすくなし | 11月23日 13時15分 |
2569 | 長き夜に卯波の小間のオフの会かねて親しき様に交わる | 11月23日 18時12分 |
2574 | 群れをりて鳴くやくぐもる夕鴉悲しきことの弔いなるか | 11月24日 05時21分 |
2582 | うるわしき高き声域夢はるか今バリトンで第九を歌う | 11月25日 05時59分 |
2589 | 戦乱は過酷なれども思い出にわが人生は豊かなりけり | 11月25日 19時09分 |
2594 | 朝なさな行き交う人で騒がしき駅をわが家と寝るホームレス | 11月27日 05時01分 |
2597 | ベルリンは瑕疵ぬぐひてや東独の往事の猛き若者は今 | 11月28日 05時09分 |
2603 | 旧臘の名簿の友のありし日を偲びつ過ぎしひと年をしる | 11月29日 05時24分 |
2607 | 極月のとく来たりては不意なりし余日を満たすよき術もがな | 12月2日 09時48分 |
2615 | 十歳は頭巾かぶって空仰ぎグラマンめがけ口でダッダッダッと | 12月4日 20時46分 |
2619 | 香ばしき夕べの凪を尋ねきて焚きし葉の香のとりどりなるを | 12月5日 09時29分 |
2622 | 在りしもの失せたるけふのあはれなるあしたに萌へむ惜しきもの | 12月6日 08時23分 |
2632 | 口髭のじっと見つめる漱石に親しみつつも今日は忌日と | 12月9日 19時12分 |
2639 | 豪雪に千歳空港閉ざされて二日も待つがみんな平穏 | 12月12日 10時53分 |
2641 | 立ちんぼを暫し嘲る雪女郎“冬・JR・快適”の車内広告 | 12月13日 09時53分 |
2643 | 季を問わず濃き茄子色の親潮は北の魚を抱く母なり | 12月13日 19時59分 |
2650 | ホッチャレの白く流るる澪筋をシャケ黒々と遡りゆくなり | 12月16日 06時42分 |
2656 | 寒風に実柚子の日ごと色なして湯に香りたつ叙情を待てり | 12月19日 18時25分 |
2659 | 寒雲の矢切の渡し寂しかり集ひし夏の賑はひし日を | 12月20日 05時19分 |
2662 | 遥かなるDNAに詩ありぬ我今ありて何処へゆくや | 12月21日 05時16分 |
2666 | 窓越しに錆びゆく木々の連なるを薄日の空にわれは楽しむ | 12月22日 11時17分 |
2672 | 美しき言葉は過去の仮定形未然に深き悩み醸せり | 12月24日 18時56分 |
2675 | 年の夜へ七夜ばかりをたひらにとこの年の瀬はことに祈らむ | 12月25日 07時49分 |
2689 | おほとしのともに卒寿の父母のすこやかなるを夢に見ばやと | 12月30日 11時20分 |
2693 | 大年の過ぎたるほどの青天を凪の浜辺でひとり楽しむ | 12月31日 08時16分 |