連番 | 和歌 | 投稿日時 |
1164 | 二十一世紀迎へし今日の日に賀状あらたむ つつがなしやと | 1月1日 23時25分 |
1167 | 天翔る八尋白鳥東征の皇子は『古事記』の叙事詩となりぬ | 1月2日 15時05分 |
1169 | 花野来て花に尋ぬる幾度ぞ人の心のはかりがたきを | 1月4日 00時37分 |
1173 | 木喰の上人ひとり旅にあり天一自在身を捨つる身は | 1月4日 22時40分 |
1175 | しんしんと雪は降りけりたちまちに白き闇なる街道をゆく | 1月6日 00時00分 |
1177 | 山巓に遙か銀嶺眺むれば天啓といふ言葉を思ふ | 1月6日 22時16分 |
1181 | 足たたばヒマラヤの雪くはましと子規は詠みたり 無念を思ふ | 1月8日 23時24分 |
1186 | 草原の風に吹かれて佇めり ひとり夜空の星を数へて | 1月8日 23時24分 |
1191 | ひそやかに息づく闇に星降りぬサザンクロスをふたり見つめて | 1月10日 00時30分 |
1199 | 吹上の浜の秋風さやさやとさやぐ夕べに百千鳥鳴く | 1月11日 01時14分 |
1205 | 雪降るや遙か連山隠しゐて鈍色雲の低く流るる | 1月12日 00時54分 |
1207 | 初空を茜に染むる日の神の浴(あ)みする川は清らに流る | 1月12日 19時26分 |
1210 | 水仙の香も雪のなか海岸にナルキッソスの面影見つめ | 1月13日 01時09分 |
1215 | 船団の消えゆく影追ふロカ岬ここに地は果て海は始まる | 1月14日 00時13分 |
1217 | 罪深き君なれ我なれ一日をタゴール詩集読みて過ごしつ | 1月14日 10時53分 |
1224 | 暁(あかとき)のラジオ講座はただ眠く夢では解けた数列・行列 | 1月15日 00時11分 |
1237 | 高層の窓に寄り添ひ黄昏が夜景となりし街を眺むる | 1月16日 01時03分 |
1242 | 微睡みのなかに聞こゆる虎落笛 笛吹男夢に追ひなむ | 1月16日 18時52分 |
1247 | 思ひ出の街今のわれには遠けれど夢もうつつもきみに逢ひたい | 1月17日 01時03分 |
1249 | 何時だつて夢の途中でゐたいけど虚飾の街に漂つてゐる | 1月17日 07時54分 |
1258 | モカマタリ カフェ・カプチーノほろ苦く思ひ出すのはあの喫茶店 | 1月18日 00時43分 |
1263 | 人嫌ひ人恋しさのせめぐ夜はアダージョ流るる部屋に籠もれり | 1月18日 19時56分 |
1266 | 風花となりて舞ひたき心地する暗き御堂に仏座せど | 1月19日 00時25分 |
1273 | 空青く海あをくして白鳥はただに白けり 歌人のごとく | 1月20日 01時57分 |
1275 | 夕映えに豊かなるかな麦秋の近江の里にひとり佇む | 1月20日 08時19分 |
1278 | はらはらと降りける雪に生(あ)れし日の雪の深さを思ひ重ねつ | 1月20日 17時15分 |
1283 | 遙かなるきみに寄せたるわが思ひ朧なる夜の闇に溶けゆく | 1月20日 18時52分 |
1287 | 振り向けばいつも君がゐたあの夏の日の輝きを胸に秘めつつ | 1月21日 01時36分 |
1294 | 異国より今また伝はる惨状に神戸の街のかつてを思ふ | 1月22日 00時07分 |
1297 | 魂の慟哭聞こゆ異国(ことくに)の獄舎にありて詠める歌より | 1月22日 20時30分 |
1299 | 恵まれし者の優しさ拒みゐて友は悲しみただ深めゆく | 1月23日 00時31分 |
1303 | 頼政に射られし鵺はうつほ舟蘆屋の浦に浮きつ沈みつ | 1月24日 00時12分 |
1307 | 波風も静かであれと念じつつ君を見送る大物の浦 | 1月25日 00時38分 |
1310 | 激戦の名残とどめし環礁の波のまにまにわれも漂ふ | 1月25日 18時50分 |
1312 | 春風とスクランブルを駆けてゆく君の待ちたる黄昏の街 | 1月25日 23時56分 |
1317 | 群時雨一樹の陰に宿りなば慰むるごと蟹は戯る | 1月27日 00時19分 |
1319 | 参道に雪降りつみて鎌倉は今宵鎮めり 昔語らむ | 1月27日 16時23分 |
1321 | 玉椿紅く淡くと染めゐたり雪解雫のきらめきのなか | 1月28日 14時51分 |
1323 | 霞たつ熊野古道を辿りなば花訪ふひとの影ぞ恋しき | 1月28日 22時11分 |
1325 | チャット中オネエ言葉も板に付きゲンジツなんて忘れそうだわ | 1月29日 00時18分 |
1329 | 水無月の晦日にくぐる茅の輪にて荒ぶる神を祓へ和める | 1月29日 23時47分 |
1335 | 春を待つ初天神のにぎはひに絵馬を奉ずる受験生見て | 1月31日 00時05分 |
1341 | 彫金の鎚音かろく響かせて無口となりぬ工房の午後 | 2月1日 00時52分 |
1345 | あかつきの女神籠もれる天空の光の宴(うたげ)オーロラを見ゆ | 2月1日 18時19分 |
1350 | 朝霜の白く置きたる地を割りて蕗の芽吹ける 春を告げむと | 2月2日 23時43分 |
1354 | ラファエロの描きし聖母たをやかにルネッサンスの息吹伝へる | 2月3日 15時12分 |
1356 | 子を思ふ母の心を十六夜の日記に綴りいざ鎌倉へ | 2月4日 01時00分 |
1358 | 暮れてゆく春の岬のかもめ鳥 旅立ちたまへと風や吹くらむ | 2月4日 14時01分 |
1363 | 有明の海のゆりかご諫早の干潟追はるる生命いづこへ | 2月4日 23時35分 |
1369 | 近未来描く小説読み終へて明るき明日またも翳りぬ | 2月6日 00時13分 |
1374 | 霧深き海に光輪あらはれて祖国とふもの見つめてをりぬ | 2月7日 00時02分 |
1381 | 雨だれの音聞きをれば初夏のショパン弾きたる君を思へり | 2月8日 01時16分 |
1387 | いにしへの道の国なり近江路はからくれなゐに深山染まりぬ | 2月9日 00時24分 |
1392 | 小澤塾若きオペラに喝采の声は至福の余韻となりぬ | 2月9日 23時50分 |
1395 | 面影にたちたる君は花ねむの吉祥天のごとき貌して | 2月10日 09時45分 |
1398 | 雪野原色とりどりのフリースで駆けつまろびつ児らは遊びぬ | 2月10日 14時53分 |
1400 | 「情熱のアロマ」と歌ふ陽水の色に染まりぬ『コーヒー・ルンバ』 | 2月11日 01時00分 |
1403 | ジァンジァンにプラネタリウム渋谷より撤去さるらし春惜しみつつ | 2月11日 14時25分 |
1405 | 赤道を越えたる旅ぞ漆黒の夜空の北に仰ぐ白鳥 | 2月12日 01時25分 |
1408 | 城壁に立ちて叫びしカテリーナ 塩野七生のペンに息づく | 2月12日 13時07分 |
1411 | 雪降れば托鉢とてもままならず五合庵なる漂泊詩人 | 2月12日 22時17分 |
1414 | 亜麻色の髪なびかせて乙女子はふらここ揺らす春の夕暮れ | 2月13日 00時55分 |
1420 | 如月の海蒼くして水底に沈める船を嘆き見やれど | 2月14日 01時23分 |
1424 | 空洞化嘆く声さへ力無く老舗一軒のれん下ろしぬ | 2月15日 00時48分 |
1428 | 早春の風に乗りたき心地して三色菫窓辺に飾る | 2月15日 14時15分 |
1431 | 「樹齢は」と問へど答ふる人もなき父丹精の盆栽残る | 2月15日 20時48分 |
1434 | 『冬の旅』第五曲なる『菩提樹』を合唱せしこと淡き思ひ出 | 2月16日 01時09分 |
1438 | 虚辞虚勢張れども心露はなる臆面もなき言のあはひに | 2月16日 19時04分 |
1440 | 不穏なる地殻の軋み何処よりいつまた地震(なゐ)の報や届かむ | 2月17日 01時20分 |
1444 | 世にあらむ刹那耀ふ結晶のあはれ淡雪水に還らむ | 2月17日 16時39分 |
1447 | 菜の花の香ほの匂ふ水郷をそぞろ歩かむ春の夕暮れ | 2月17日 22時53分 |
1450 | 卒業といふ二文字に送られてかの日かの時別れ告げたり | 2月18日 14時44分 |
1453 | 梅が枝の一節春に嘯ける源氏の君のいとどめでたし | 2月19日 00時39分 |
1461 | ほのぼのと春思はせる霞きて雪の嶺にも淡き色差す | 2月21日 01時36分 |
1465 | ほのぼのと霞初めたる春の日は空に透きゆく口笛(ふえ)とならまし | 2月21日 20時04分 |
1469 | 初夏の夜空いろどる乙女座の女神麦の穂持ちて麗し | 2月22日 00時58分 |
1475 | 天帝のゐます紫微垣(しびえん)北辰を衛るべしとぞ古歌にはあれど | 2月23日 00時37分 |
1478 | かくすればかくなるものと知りながらなほ言ひつのる人の世の闇 | 2月23日 21時19分 |
1485 | 渓谷にかかる吊橋今訪はば幼目に見し景や褪せなむ | 2月25日 21時56分 |
1487 | 里人の守りたまひし薄墨の桜今年もいのち咲かせむ | 2月25日 14時26分 |
1490 | やはらかに芽吹く雑草(あらくさ)踏みしめて野辺にたちなむ風となるまで | 2月25日 21時57分 |
1494 | 白樺の樹に囲まれし湖畔より白き帆あげてヨット繰り出す | 2月27日 00時45分 |
1502 | 夢十夜君を恋ひをる百年の後の白百合風に揺らるる | 2月28日 00時19分 |
1508 | 春雨に蔓薔薇枝を伸ばしたり弥生の空を絡めとらむと | 2月28日 23時58分 |
1512 | 繁殖の春を迎えし百鳥はサンクチュアリに囀りやまぬ | 3月2日 01時36分 |
1515 | 戯れに石を投げたり残照の海に向かひてひとりしあれば | 3月3日 00時56分 |
1517 | 風薫る五月の森に降る雪か なんじゃもんじゃの花の白けさ | 3月3日 11時50分 |
1519 | 美徳説く人の言葉を空言と聞きたることの空しくあれば | 3月4日 01時51分 |
1521 | 春雷のはつか聞こゆる遠空に円を描きて鳶鳴きわたる | 3月4日 14時06分 |
1524 | 三井寺の鐘の音わたる鳰の湖(うみ)藍と茜に満ちてともしき | 3月5日 00時58分 |
1531 | 激戦の地の壕中にありてなほ人は悲しき歌詠みつげり | 3月6日 01時02分 |
1541 | 隅田川母の思ひはいやまさり涙雨降る梅若の寺 | 3月7日 00時11分 |
1549 | 恋ふ人の心はかれぬ春の夜は思ひ出胸に転がしてゐる | 3月8日 00時53分 |
1556 | 〈LUNATIC〉月に狂ふは人の世の習ひなりしか心あくがる | 3月8日 20時08分 |
1558 | 秘め事のやうなる月とわれの宴言葉の海に光満ちたり | 3月8日 23時08分 |
1562 | 裸木はうすくれなゐの羅を纏ひ桜驕りの春を待ちけり | 3月10日 00時24分 |
1565 | 春風邪のうつらうつらもまた楽し飛行機雲を夢に追ひつつ | 3月10日 15時53分 |
1570 | 片栗の花むらさきにまつはりて春の女神の蝶は舞ひたり | 3月11日 01時48分 |
1575 | ふらここをひとり揺らしてまぼろしのきみに逢ひなむ春の余白に | 3月11日 12時19分 |
1582 | 混沌と喧噪満つるパサールにアジアの民のぬくもりを知る | 3月12日 01時06分 |
1596 | パンドラの匣をいだきし旅なれば希望とふ名の歌詠みつげり | 3月13日 19時52分 |
1609 | 万葉の歌碑辿りたし菜の花と桜彩る山辺の道 | 3月16日 00時40分 |
1615 | 春は杉・檜・鴨茅次々とアレルゲンなる風媒花咲く | 3月17日 01時08分 |
1617 | 一陣の風み吉野の花散らし弥生の空を染めて流るる | 3月17日 15時35分 |
1623 | 三月の道路走ればここかしこ工事ばかりで穴ぼこだらけ | 3月18日 01時29分 |
1630 | メキシコの森に紅葉の擬態してあまた舞ひたるオオカバマダラ | 3月19日 00時09分 |
1636 | 生(あ)れし日の雪の深さを聞きをれば闇より降れる雪を恋ふらむ | 3月19日 20時11分 |
1638 | 春の夜の神秘なるかな黒蝶は疼き孕みて真珠(たま)を生ませり | 3月19日 23時42分 |
1643 | ちさき穴殻に穿ちて祝祭の卵飾(よそ)へり春待つ午後に | 3月20日 21時03分 |
1650 | 雪解けの水分かれゆく高原に水芭蕉咲く四月来たりぬ | 3月22日 00時31分 |
1653 | 老紳士ビュッフェのケーキ選びをり“Eanie meanie minie mo?”(どれにしようかな?) | 3月22日 20時08分 |
1655 | 何処へと鳥帰るらむ黄昏に浜辺さまよふわれを残して | 3月23日 00時28分 |
1661 | 救済を歌に求めし受刑者の三十一文字に自由あれかし | 3月23日 21時28分 |
1663 | 一台の自転車貴重なりし日の哀切描く『自転車泥棒』 | 3月24日 15時43分 |
1668 | 二本(ふたもと)の桜湖畔に花散らし実生の命育みてゆく | 3月24日 23時25分 |
1671 | やはらかに若木の桜含(ふふ)まりてはつかに咲ける春を待つらむ | 3月25日 15時51分 |
1674 | 蒼き花野を海原に変えつらむ土筆坊やは波と戯る | 3月25日 20時33分 |
1678 | 悲しみはまだ明けぬのか喪のあくる君よりこない賀状せつなし | 3月26日 00時38分 |
1684 | うつつにはあらぬ夢路に漂ひぬわれを演じて疲れし夜には | 3月26日 23時13分 |
1688 | 天空に光奏でる交響詩恩寵のごとオーロラを見ゆ | 3月28日 00時02分 |
1694 | 早春の画廊に淡き色あふるパウル・クレーの油彩画ありて | 3月28日 23時50分 |
1710 | 鶯の来鳴きてやまぬ里山にけふは初花咲くを愛でたり | 3月31日 00時48分 |
1716 | 郷愁と幻想と愛シャガールの絵に霊感の花嫁は舞ふ | 3月31日 18時31分 |
1720 | きみのゐた去年(こぞ)の浜辺の桜貝耳に寄せれば海鳴りの音 | 4月1日 15時09分 |
1723 | ヒマラヤの嶺より落つる雪解けの水に還りく砂の曼陀羅 | 4月1日 21時51分 |
1730 | 真つ白なノートを開く心地する四月新たな門出祝ひて | 4月3日 00時42分 |
1733 | 介助犬連れて学門くぐりたる三年(みとせ)の辛き試練を耐えて | 4月3日 18時04分 |
1740 | 清滝へ紅葉の渓を山桜うすくれなゐに霞染めたる | 4月5日 00時07分 |
1746 | 神苑の水面に映るくれなゐの枝垂れ桜に春は闌けゆく | 4月6日 00時59分 |
1751 | 湧水の渓を覆へり花霞うすくれなゐに色を重ねて | 4月7日 08時50分 |
1757 | みちのくの旅の終はりの水湊灯ともしごろに花は舞ひ散る | 4月7日 16時41分 |
1761 | 放課後のコートに躍るきみを見てわれは佇(た)ちをり残照のなか | 4月7日 22時44分 |
1766 | 心当てに君を待ちをる春の苑夕闇甘く揺れるブランコ | 4月8日 12時21分 |
1771 | 猛りくる波と空とのあはひにも光は満ちてターナーの海 | 4月8日 21時23分 |
1773 | 一筋の雲曳きながらジェット機は空と海とのあをに消えゆく | 4月8日 23時49分 |
1779 | 夕桜はやも散りける川面より雁飛び立ちぬ 心残さず | 4月10日 00時05分 |
1783 | 薔薇色の蕾にあるる春愁ひ鬱金桜の夢ならなくに | 4月10日 20時15分 |
1791 | 懐かしき歌はいつでも別れ歌 手首の傷などわれは知らぬに | 4月11日 22時54分 |
1794 | 花の宴朧月夜に果てぬるをかたみにかはす扇眺めつ | 4月12日 23時20分 |
1798 | 源平のゆかりならずも紅白に交じりてゆかし 桃の花咲く | 4月14日 01時17分 |
1802 | 空色の切符に心さすらへば銀河鉄道十字座をゆく | 4月14日 22時49分 |
1805 | 砂漠より運ばれいでしロゼッタ石ヒエログリフの謎解きせむと | 4月15日 13時40分 |
1810 | 光より生れし宇宙か御仏は美色纏ひぬ星の曼陀羅 | 4月16日 00時21分 |
1816 | ほととぎす雲居の空に名告りせば弓張月の武者を偲ばむ | 4月17日 00時21分 |
1820 | 日常に離(あ)るる思ひを語らむと真夜にひとり言葉を紡ぐ | 4月17日 23時08分 |
1826 | 形心の危ふき岐路にきみ佇ちぬ哀しき玻璃のモザイクに似て | 4月18日 23時39分 |
1836 | 天山にあるる光は雪解なし海を恋ひたる水は激ちぬ | 4月20日 19時44分 |
1839 | 湧水の渓渡りゆく鶯の声うららかに春は闌けゆく | 4月21日 00時35分 |
1841 | 砂に書く名前はかなき春の海思ひ寄すれど波に崩るる | 4月21日 14時24分 |
1841 | 砂に書く名前儚き春の海寄する思ひも波と崩るる | 4月21日 23時03分 |
1849 | 折れさうな月に抱かれし夕星(ゆふづつ)の耀ふ空に春は暮れゆく | 4月22日 22時20分 |
1854 | 片栗の伏せたる面(おも)にまつはりて春の女神のみどり児遊ぶ | 4月23日 23時49分 |
1859 | 青深き空に一閃の皓をなし遙かなる嶺鶴は越えゆく | 4月25日 00時40分 |
1863 | 願はくは島の夕闇朱鷺色に染めたる夢のうつつならまし | 4月26日 00時19分 |
1867 | ふと思ふ家路を急ぐ夕まぐれ 心の駅はあるのだらうか | 4月26日 22時21分 |
1872 | さみどりの小径たどりて月光の菩薩に見(まみ)ゆ春の名残に | 4月27日 22時35分 |
1875 | 帰らざる日々なればこそ恋ひしかれ公孫樹並木の続くキャンパス | 4月28日 12時58分 |
1878 | 夕雲雀空に焦がれて焦がれ落つ五月の野辺を子らは駈けるも | 4月28日 22時34分 |
1886 | 異国より届きし友の花便り林檎の甘き香に酔ひたりと | 4月30日 00時46分 |
1890 | 転校に転校を重ねしわれなれば賀状に思ふ過ぎてこし地を | 5月1日 00時17分 |
1893 | 公立を厭ふ風潮加速してちさき戦士ら橋渡りゆく | 5月2日 10時18分 |
1898 | 言の葉のひとつ惜しむにあらねどもわが咎を知り秘めしことども | 5月3日 00時40分 |
1900 | あの頃にこの治療法ありせばと夭折せし娘(こ)を母は嘆きぬ | 5月3日 15時46分 |
1906 | 毛馬堤三々五々五々は黄とたんぽぽ踏みて蕪村歩めり | 5月4日 22時53分 |
1908 | ながむれば朧に消(け)ぬる夜半の月なほも見つれど雫こぼるる | 5月6日 00時18分 |
1913 | 古き家の軒に絡める山藤の花紫に秘めし想ひ出 | 5月7日 00時13分 |
1919 | 手荷物は等身大の縫ひぐるみロイヤルバレエの少女機上に | 5月7日 21時54分 |
1927 | うつし世の哀しみ己(おの)がうちなれば透きたる玻璃の色を愛でたる | 5月10日 00時49分 |
1934 | 若草の丘にのぼりて見晴るかす海と空との溶けあふところ | 5月11日 00時44分 |
1938 | 新参のホームレスなるか横顔の鼻梁高きが心惑はす | 5月11日 20時33分 |
1942 | 生(あ)れかはる星は宇宙の真闇より幾億年後の便り届けむ | 5月13日 00時10分 |
1946 | 開闢の初めにありとふビッグバン 神を信じぬきみ説きたまふ | 5月14日 00時09分 |
1952 | 外洋のうねり寄せくる桂濱像となりても南溟を見む | 5月14日 23時27分 |
1962 | 青林檎さびしき人のこころもて置かれし部屋のかをりすがしく | 5月17日 00時50分 |
1966 | 閉館となりて久しきシアターに通ひつめたる日々なつかしき | 5月17日 20時12分 |
1972 | くれまちす・あやめ・おだまき・あぢさゐのむらさき匂ふはつ夏の苑 | 5月19日 01時05分 |
1975 | 白薔薇夕くれなゐに染まりつつ吐息のごとく花を散らせり | 5月19日 18時39分 |
1977 | こがねづく麦の穂揺らし風わたる初夏の空スピカ麗し | 5月20日 22時19分 |
1980 | 六道を見しとふ女院ゆかりなる大原の里に何思ふべし | 5月22日 00時11分 |
1984 | しなやかに地に下りたちぬ猫族はネットに購ふ本携えて | 5月23日 00時24分 |
1988 | 褐色のサハラ砂漠に咲ける薔薇 砂漠の薔薇に心慰む | 5月24日 00時29分 |
1991 | またひとり冒険家死すかの人もジュール・ヴェルヌを読みたる世代 | 5月24日 23時27分 |
1996 | ぬばたまの夜をあかあかと電脳の海に溺るる漂流者あり | 5月25日 22時09分 |
2000 | つかの間のエトランゼなり帆船の行き交ふ海に思ひ馳せれば | 5月27日 00時47分 |
2003 | 夕光の海広がりぬ岬には悲しき秘話のあまた残れど | 5月27日 22時50分 |
2007 | はつ夏の山辺彩りたよたよと雨に打たるるあぢさゐの花 | 5月29日 00時07分 |
2011 | 面影のきみとこしへにうら若く年ふることのなきを淋しむ | 5月30日 00時51分 |
2015 | ハイブリッドなる穀物の席巻に種苗ビジネスいよよ栄える | 5月31日 00時16分 |
2021 | 鈍色の雲と雲とのあはひより放射となりて光洩れくる | 6月1日 00時50分 |
2025 | あぢさゐの濃きむらさきの色さして黄昏てゆく六月の宵 | 6月2日 00時18分 |
2028 | 梅雨闇に白き十字のほの明かり日陰の花の愛(かな)し懐かし | 6月2日 15時42分 |
2031 | 残照に映ゆる内海風はらみ小(ち)さきヨットの帆影となりぬ | 6月3日 00時58分 |
2035 | 眺望のひらけしところ背のザックおろして憩ふ心地良き風! | 6月3日 22時14分 |
2038 | 掴まんとすれど指間を逃れゆく霧のやうなるふたりのこころ | 6月5日 01時14分 |
2043 | 懐かしき声友の死告げたれば追憶といふ小径たどりぬ | 6月6日 00時28分 |
2046 | まなかひの君溌剌と笑みたるも紫立ちし雨に翳りぬ | 6月6日 23時58分 |
2053 | 外つ国に赴任せし間の近況を綴りてくれし手紙色あせ | 6月8日 00時04分 |
2058 | 猫の仔のまどろみゐたる昼下がり風にさわさわ和毛(にこげ)靡かせ | 6月9日 01時05分 |
2063 | 神話などとうに崩れて幼らの心に傷の癒し難かり | 6月10日 00時16分 |
2065 | いとけなき児らに刃は刺すものか痛みを知らぬ憎悪の果てに | 6月11日 00時45分 |
2068 | 人体もまた小宇宙さればこそ光と闇の相剋の旅 | 6月12日 23時11分 |
2071 | DNA解析すればみなひとはミトコンドリア・イブなるといふ | 6月14日 01時08分 |
2075 | 稼働せぬ〈もんじゅ〉の智慧を御すといふヒトの業には暴走なきか | 6月15日 00時20分 |
2078 | キャンバスに青塗りこめし哀しみは薔薇の翳りにピカソ誘(いざな)ふ | 6月16日 01時15分 |
2081 | 生殖も治療も科学なりし世に手のぬくもりを忘るなと願ふ | 6月17日 01時08分 |
2085 | 千年を経てみづみづしき恋の歌 ひとは悲しき恋するものぞ | 6月17日 23時37分 |
2088 | 名も知らず路傍に咲ける雑草(あらくさ)を愛でつつ歩むはつ夏真昼 | 6月19日 00時16分 |
2092 | 看板に偽りのやうな綺羅まとひ空漠論議低きに流る | 6月20日 00時00分 |
2096 | 太陽を一周するに165年海王星の四季とは如何? | 6月20日 23時45分 |
2100 | 日の神の馬車御しがたくパエトンはゼウスの雷に打たれしといふ | 6月22日 00時54分 |
2105 | 検証を厭ひ叙情の微温湯につかりしわれを冷めて眺むる | 6月23日 00時51分 |
2108 | 北国に遅き春告ぐ白玉のつらつら椿つらつら愛し | 6月23日 21時33分 |
2111 | 古唐津の碗に描きて偲びしか海に隔たる野辺の八千草 | 6月25日 00時19分 |
2116 | いにしへの恋物語追ひながらたどる古道に鶯を聞く | 6月26日 00時23分 |
2118 | 土手道の行く手はばみて蔓性の草はびこりぬわがもの顔に | 6月27日 00時45分 |
2122 | 西国の満願寺へといく鉄路廃れしのちに草や覆へる | 6月29日 00時13分 |
2124 | もくもくと雲のわきたる壁紙を貼りめぐらせし小児病棟 | 6月29日 00時22分 |
2130 | みちのくの旅の終はりに眺めしは雪いただかぬ伊吹霊峰 | 6月30日 00時33分 |
2133 | 魚影追ひ静寂の波にたゆるとき魚眼レンズのわれとなりたき | 6月30日 18時21分 |
2138 | バーチャルの吟行なれど母川にきみと蛍を追ふも楽しき | 7月1日 00時33分 |
2144 | くろぐろと水を湛へし奥つ城のたまづさなれば蛍恋ふらむ | 7月1日 22時13分 |
2146 | 夕闇にひとつ光れるほうたるを追はば真闇へ迷ひ入りなむ | 7月1日 23時33分 |
2149 | アンタレス・マースふたつの赤星が消ぬがちに見ゆ 不穏なる空 | 7月2日 01時27分 |
2154 | 七つ星背中にしよへる天道の陰陽となり時は廻らむ | 7月3日 00時14分 |
2156 | 園児らの飾りし竹の短冊に今様事の願ひ多かり | 7月4日 01時01分 |
2160 | 凍て空に愛でし昴もビーナスも消ぬる夏空月の耀ふ | 7月5日 00時26分 |
2165 | 酸性雨日常化してカルシウム日々溶かさるる日本列島 | 7月5日 23時55分 |
2170 | 銀色のアルノ流るるフィレンツェの街回遊する若き旅人 | 7月7日 00時52分 |
2174 | 葦の海分かれし壁を預言者の閉づるもあはれファラオの民に | 7月8日 01時50分 |
2174 | 葦の海分かれし壁を預言者の閉づれば水もあはれファラオの民に | 7月8日 01時40分 |
2179 | 闘争の季節過ぎたるキャンパスにアンノン族の跋扈始まる | 7月8日 20時28分 |
2182 | 果無の熊野古道の道半ば路傍に小さき墓しづもれり | 7月9日 01時05分 |
2186 | 安曇野に湧きいづる水涼やかに渓潤せり花山葵咲く | 7月9日 23時40分 |
2190 | 離島までワンデイ・トリップ甲板に浴びる陽射しを怖ぢけざるころ | 7月11日 01時07分 |
2192 | 今天女迦陵頻伽の衣まとひでんぐり遊ぶ宇宙空間 | 7月12日 10時03分 |
2194 | コンパス座ぼうえんきょう座南天は航海時代の名残に満ちて | 7月13日 01時05分 |
2197 | 掌中に慈しみゐる玉繭のからころからと唄響(とよ)もして | 7月15日 01時24分 |
2199 | 六本の尖塔聳ゆコーランの聲あふれくるブルーモスクに | 7月15日 23時57分 |
2201 | 無名者の声なき声にあふれしむ無言館とふ哀しき器 | 7月16日 22時43分 |
2204 | 〈新しき村〉にたまねぎ・かぼちゃなど眠りし人とともに育つや | 7月18日 00時23分 |
2208 | クーベルタン男爵の遺志ほど遠き五輪貴族の集へる館 | 7月18日 20時14分 |
2210 | 塞翁が馬の連れ来し暴れ馬乗るか乗らぬか決めかねてゐる | 7月20日 00時40分 |
2212 | ぬばたまの夜毎身を焼く篝火に手綱とられて潜ける鵜はも | 7月21日 12時42分 |
2214 | なまぬるき風に吹かれてそぞろ歩く逢へぬ今宵に二星またたく | 7月21日 23時36分 |
2217 | いなづまの蒼き光は闇を裂き心惑はす花火にも似て | 7月22日 23時41分 |
2219 | うたかたの恋たまゆらの命とやはかなごとのみ思ひいづる夜 | 7月24日 00時00分 |
2221 | 白亜紀の樹々の涙のアモルファス琥珀は虫のタイム・カプセル | 7月25日 19時26分 |
2223 | 吾嬬の弟橘のゆかりなる嬬恋村に乳の道見ゆ | 7月26日 01時11分 |
2227 | 天空の恒河なりしか夕闇に黄道光のはつか流れて | 7月27日 00時14分 |
2233 | 茜さす酸漿ふふみ遊ぶ児の夕焼け空に焦がれゆく夏 | 7月29日 01時19分 |
2239 | 今生のいまが良けれといふひとの卯波のごとき半生も良し | 7月31日 01時01分 |
2241 | 生命の起源は海の微生物ゲノムは昏き海を忘れず | 8月1日 00時41分 |
2243 | ウルトラの故郷といふM星雲 薔薇・鷲・帽子見れど飽かざる | 8月1日 19時55分 |
2245 | 若女・万媚・深井と面打の暴く加齢の宜なりけるを | 8月1日 23時48分 |
2247 | 過熱する都会に百鬼夜行して眠れぬ蝉がひとしきり鳴く | 8月3日 00時03分 |
2249 | 沖つ海眩しき蒼き漁り火のほの揺らぎゐて澪を照らしぬ | 8月4日 01時09分 |
2251 | 夕茜あかあか燃えて八月の空に挽歌を蝉歌ふらむ | 8月6日 00時07分 |
2255 | 日本史は大正までかと思つてゐた歴史教育〈我等の時代〉 | 8月6日 21時57分 |
2258 | からからと笑ふ骨すら残らない8月6日の石の階 | 8月8日 00時10分 |
2261 | 如己堂に綴りし文の褪せぬがに今日長崎の鐘は鳴るらむ | 8月9日 00時42分 |
2264 | 敦賀へと単身赴任しゆくきみ危険手当の高さ呟く | 8月9日 23時09分 |
2266 | あまも生ふ小暗きかげよりちぬいでて光の粒を吐きて過ぎゆく | 8月11日 00時36分 |
2268 | 透きとほるもののいとしさスケルトン時計支ふる歯車の営 | 8月11日 13時22分 |
2270 | 銀輪の抜きつ抜かれつ野に消ゆるミラーグラスのアスリートたち | 8月12日 01時30分 |
2273 | ちやん付けでわれを呼ぶ友ばかりゐてほぐれてゆきぬ同窓の宴 | 8月13日 19時53分 |
2275 | 本質を問はぬ論議の幕切れを終結とやいふ先送りとや | 8月14日 19時54分 |
2279 | 歴史とは愚行に学ぶことだらういつか来た道歩まぬやうに | 8月16日 00時38分 |
2281 | 道化師の自在に繰るるトランプのトラップトリック騙し絵の国 | 8月17日 00時52分 |
2284 | 哀しみはたとへば真昼ゆやゆよんとふらここ揺らす道化師とゐる | 8月18日 00時08分 |
2288 | 篝火はほのか揺らぎて夕顔のあだし夢へとわれを誘ふ | 8月19日 01時29分 |
2290 | 夕暮れて千燈萬燈ともさるる石の仏は秘めて語らじ | 8月21日 00時19分 |
2292 | 濁流はこんな間近に来てゐたとのちのち思ふ決壊の夜 | 8月21日 23時54分 |
2295 | 防波堤かろがろ越ゆる荒波に高ぶりてゆくわれもまたゐる | 8月23日 00時42分 |
2297 | 言霊のさきはふ國に夜ごと夜ごとサザンの唄の流れけるかも | 8月23日 22時54分 |
2299 | 旅僧の問はず語りにもの狂ふ胡蝶なるべしあかときの夢 | 8月24日 19時59分 |
2302 | 法師蝉つくつく語る愛宕山連歌のえにし今に偲ばむ | 8月26日 00時51分 |
2304 | 散らすまへに数えてしまふ束の間の予定調和のなかにゐたくて | 8月27日 00時19分 |
2307 | ぬばたまの黒髪は死語茜さす君らが髪を嘆きつつ見ゆ | 8月28日 19時02分 |
2309 | 五メートル四方満たざるエレベーター茶髪金髪錦綾なす | 8月30日 00時38分 |
2312 | 定型といふコスチューム翻し放たれてゆくファントムがゐる | 8月31日 23時23分 |
2314 | ハンマーに打ち壊さるる壁がある心の壁は越えがたかるも | 9月1日 23時20分 |
2316 | 山峡に語りわたらふ人の絶え巨きダムへと貢がれてゆく | 9月3日 00時46分 |
2319 | ふたもとの桜に遅速ありぬべし咲くも散れるも果ては枯るるも | 9月4日 01時10分 |
2321 | アキレスと兎の駆けつこあやかしの話術巧みに忘れがたかり | 9月5日 00時59分 |
2323 | ほろ苦き思ひ出ぽろぽろこぼれくる掠れ掠れのハモニカの音 | 9月6日 00時48分 |
2325 | ふらんすの野のこくりこの火の色の思ひにそまる歌をしぞ思ふ | 9月7日 01時14分 |
2328 | 言葉ひとつ選りて歌詠むひつそりと醸されてゆくワインのやうに | 9月8日 00時01分 |
2329 | つれづれに聞く虫の音の絶ゆるとき雫こぼるる真闇と思ふ | 9月9日 00時23分 |
2334 | 座右には何置かるらむ九夜を過ぎて筑波の道をゆく君 | 9月10日 00時49分 |
2336 | 菊坂の路地の暮れかた一葉が匂ひたつやう十三夜の月 | 9月11日 00時39分 |
2341 | 蛇穴をいづればアダムとイヴ達がうすくれなゐのヴェールをまとふ | 9月11日 19時50分 |
2344 | 恒河沙となりて降りくるもののした眠れぬ夜に抱かれて眠る | 9月12日 19時06分 |
2347 | 逆縁の子のまたあまた生まれけむ言葉とどかぬ君を淋しむ | 9月13日 20時16分 |
2351 | ひとりづつひとりのしづもるかげ連れて疾走してゆくMYSTERY TRAIN | 9月15日 00時03分 |
2357 | 既視感のなかの映像日常がルビコン河を渡りはじめる | 9月17日 00時49分 |
2360 | 夕暮れて川面に群るるかげろふの生けるかぎりのいとなみ見つる | 9月18日 00時34分 |
2364 | 語られぬ言葉のあはひおのづからあらはるるあり何を語らむ | 9月18日 23時51分 |
2367 | ひとりづつひとりの主張さはあれど言葉尖れば居づらくなりぬ | 9月21日 00時24分 |
2372 | 不興なる羽音うとみて蠅打てばたくましき卵しらじら笑ふ | 9月22日 15時04分 |
2374 | 秋茜群れ飛ぶ野辺のほむらだちさねさし相模の恋はかなしも | 9月22日 23時57分 |
2376 | 緋の色を並めてさびしき曼珠沙華暮れなづみゆく海を見てゐる | 9月24日 00時59分 |
2379 | 海上に道はありけむ干瀬(ひし)が彼方虹たつ朝のほがらに見ゆる | 9月25日 00時16分 |
2381 | 利尻富士仰ぎて礼文かしこまる桃岩荘は健在なりき | 9月26日 00時11分 |
2384 | 神話とは虚構なりしかパンドラの匣放たれて災ひ満てり | 9月27日 00時32分 |
2386 | ときじくのかくのこのみの恐くも誰が手にあらむ誰が手に取らむ | 9月28日 23時56分 |
2389 | 満ちて欠く月のならひに生れしより身ぬちをめぐる月の幾許 | 9月30日 00時56分 |
2391 | しみじみと来し方見つむ日も良かれ金木犀のかをりたつ朝 | 9月30日 12時48分 |
2396 | くもりなき月あらはるる今宵にぞ昔をとこのまなかひに顕つ | 10月2日 00時56分 |
2398 | 十六夜の月あきらかに薄野は銀の笛もて童子がさやぐ | 10月3日 00時45分 |
2401 | まめまめしき書はまさなけれ更級の月影飽かず眺めやる夜は | 10月4日 00時33分 |
2403 | 夜のほどろ小草に露の玉おきて物音なべて還り来むとす | 10月5日 01時19分 |
2406 | しづもれる樹ゆゑとく知るくれなゐのまばらに見えて秋は闌けゆく | 10月5日 18時55分 |
2409 | たまかぎる夕さりくればかへり来む言葉の園に遊ぶたまゆら | 10月6日 23時32分 |
2412 | いそのかみふるの中道なかなかに笛吹きすさぶ闇はしづけし | 10月8日 01時38分 |
2415 | のどやかに草食む牛と思ひしがあひ食みあひて身をば食みたり | 10月8日 23時58分 |
2419 | 瑠璃色の勇気が裁く正義あり議定書離脱せし大義あり | 10月11日 00時39分 |
2421 | タックルのなかにボールは隠されてアメフトかくも戦争に似る | 10月12日 01時16分 |
2425 | さだめなき世はまさをなる空深く赤き風船とどまれよいさ | 10月14日 01時00分 |
2428 | 角ゆゑに狩らるる犀と神ゆゑに狩りあふヒトといづれゐがたき | 10月15日 23時41分 |
2431 | 葡萄酒とパン分かちあふ聖餐に使徒書はいへり〈愛しあふべし〉 | 10月18日 00時23分 |
2433 | いたづらに時はへめぐり揺りもどり終末時計今何時だらう | 10月19日 01時02分 |
2435 | 門に貼る鍾馗の札や効能は魔除風邪除疱瘡除とぞ | 10月20日 00時43分 |
2437 | 産土の神忘れたる我等なりとほき杜へと着飾りてゆく | 10月21日 19時23分 |
2441 | 逃水の果てにあるもの追ふやうに空しくあがくひとりづつひとり | 10月23日 00時48分 |
2444 | 巡礼のそびらに雪は降りつみてとけゆく夢は砂のごとしも | 10月24日 00時54分 |
2448 | かへるみの手向けの幣も振る袖も時とふ旅を斎ひてゐるか | 10月24日 23時49分 |
2451 | 雪起し鰤起しとや白山を鈍雲低く流るる向かう | 10月28日 12時55分 |
2454 | 蒼穹の果てに挑みしカモメありジョナサンきみはチャック・イエーガーか | 10月30日 09時01分 |
2458 | 〈かくも長き不在〉といふ傷跡の残らぬ戦など無きものを | 10月31日 01時26分 |
2461 | 予定なき日曜の朝くつろぎは詩歌の言葉拾ひはじめる | 10月31日 23時54分 |
2464 | はじまりは一個のボタンの掛け違ひふたりの視線が食ひ違つてゆく | 11月2日 00時47分 |
2467 | 被曝者の寸断さるるゲノム地図読めねば身ぬち神迷走す | 11月2日 23時07分 |
2473 | み吉野のもみぢを幣と見るまでに散りつつあるか風のまにまに | 11月5日 00時55分 |
2475 | うつろへる色とかをりをまつらはす菊人形の眼にある虚空 | 11月5日 23時09分 |
2478 | ほ乳類齧歯目リス科またネズミ科つぶらなる目に変はりなけれど | 11月7日 00時51分 |
2482 | ひさかたの天つ少女が唐衣振る袖のなき新嘗の世か | 11月8日 01時17分 |
2485 | 天空のオデュッセイアはメーテルの旅の途中の銀河鉄道 | 11月9日 01時01分 |
2488 | カウボーイハットの似合ふ男なりひとつ写象にこだはりをれば | 11月10日 00時41分 |
2496 | 蔵はれる樹木の耳もなき渓を赤新月ののぼりゆかむか | 11月11日 00時59分 |
2500 | アメリカの自由の風は異端児を嫌ふと知つたベトナムの頃 | 11月11日 22時57分 |
2513 | 時じくそ目覚める兵士ありといふ間なくそ人の通える道に | 11月12日 23時33分 |
2522 | 人形の家をおほへる雪あらば夢のほどろにさめざらましを | 11月13日 23時43分 |
2534 | 標なき三叉路ありぬ選ぶとはつひには捨つることなりぬべし | 11月15日 00時48分 |
2539 | 新世紀なるべしタンカ、短歌にて恋愛談義電脳に咲く | 11月15日 23時53分 |
2541 | きみのゐた皐月若葉はけざやかにいぬる霜月零れてやまぬ | 11月16日 21時47分 |
2544 | 波の花みぎはの池にさかりなる桜紅葉の寂けき夕べ | 11月18日 00時24分 |
2546 | 天翔る獅子はのみどの奥ふかくおらびゐにしか 星の雨降る | 11月19日 00時52分 |
2553 | 白銀の鱗装束般若とふ智慧の面を授かるあはれ | 11月20日 00時53分 |
2556 | 蕭条とふれる漱石山房の一夜にきみは夢見つらむか | 11月20日 22時58分 |
2560 | 蒼穹に吸はれゆくもの見つめゐつ風に吹かれて風に震へて | 11月21日 23時12分 |
2565 | くるこない喪はあくるともあかからぬ君ゆゑからき寿ぎの状 | 11月23日 01時07分 |
2572 | 秋闌けてひとり寝る夜のほどろにはみな美しく夢にたつ見ゆ | 11月23日 20時53分 |
2577 | ホセ・クーラのテノール歌ふ〈アイーダ〉と わがことならぬ悲劇ゆゑ美(は)し | 11月24日 18時42分 |
2581 | 美しきもの見しひとよハンニバル勤しみなべて真紅の宴 | 11月24日 23時39分 |
2593 | ボウフラを花のお江戸に売り歩く月夜の利左のその後や如何に | 11月27日 00時13分 |
2596 | ハンマーで毀てぬ壁はshieldかbarrierなるかそれも命題 | 11月27日 23時34分 |
2602 | 源氏名のやうな名ばかり続きゐし名簿にゆかしと〈子〉の名前見つ | 11月29日 00時18分 |
2604 | 生(あ)れかはる星のたまづさ伝へけり恒河沙わたる原子のドラマ | 11月30日 00時41分 |
2606 | モノリスも今だ見なくに暮れむとす2001年HALは乱るる | 12月1日 00時41分 |
2610 | 選別の思想極まるユートピア〈GATTACA 〉ハウスのサプリメントな夜 | 12月2日 21時49分 |
2612 | 異界へと招かれやすき年らしいハリー11千尋10歳 | 12月4日 00時04分 |
2617 | 苛めつ子世にはばかりて平成も苛められつ子はびこらむとや | 12月4日 23時18分 |
2621 | たもとほる野辺に凍て菊あはれなるきみが心の花にあらねど | 12月5日 23時23分 |
2623 | 電脳の空に浮かびし円盤のいらへぬ朝のさびしけるかも | 12月6日 23時34分 |
2626 | 史上初SOSを打電せしタイタニック号いまだ深海 | 12月7日 19時37分 |
2629 | 黒潮は滔々流る水底に母父(おもちち)恋ふる霊をとどめて | 12月8日 00時30分 |
2633 | 草枕朧月夜にまとひたり蕪村句集の春の夜のごと | 12月10日 00時35分 |
2635 | 幕切れはいつもベルの音シンデレラ・エクスプレスは行つてしまつた | 12月11日 00時07分 |
2638 | じりじりとやかるるトタン屋根の上マギーは何を見てゐたのだらう | 12月12日 01時10分 |
2640 | ゆくりなく吹雪に帰路をとざされしきみ今機上未だ千歳か | 12月12日 19時21分 |
2644 | 波照間の珊瑚月下に生るるとき母となりたき子宮蠢く | 12月13日 22時15分 |
2646 | 原始地球あまた光に溢れいづ混沌の海われもいだきて | 12月15日 00時41分 |
2648 | アマデウス言葉遊びにうつけども至福に満つる五線譜のうへ | 12月15日 23時44分 |
2651 | 一筋の澪はありけむ深き昏き川隔つともきみと行くため | 12月16日 20時40分 |
2651 | 一筋の澪はありなむ深き昏き川隔つともきみとたどらむ | 12月16日 20時38分 |
2653 | 〈訂正〉白鳥となりし皇子あり羽曳野のかの陵にしづもりてをり | 12月18日 01時06分 |
2653 | 白鳥となりし皇子あり羽曳野のかの陵にしづもりてあり | 12月18日 00時29分 |
2655 | 考えてみれば殺戮東征の皇子を古事記の叙事詩といふも | 12月19日 00時41分 |
2658 | 茜さす紫雲ぞ愛しけやし恙なき日のしるしと思(も)へば | 12月20日 00時37分 |
2661 | 風花の舞ふ日御堂に置かれゐし白き棺も家族の歴史 | 12月21日 00時41分 |
2665 | フェルマーの定理解かるる数式の美しかりき曼陀羅のごと | 12月22日 01時05分 |
2667 | 一筋の澪はあらまし深く昏くひとのこころに澱める河の | 12月23日 10時37分 |
2670 | 遮断機の向かうにきみは立つてゐる他人のかほをつくろひながら | 12月24日 00時40分 |
2674 | 恩寵とつひにはならぬわれの血の半ば遺さる聖誕の朝 | 12月25日 01時05分 |
2677 | フィヨルドの海にたなびく茜雲永遠の叫びに震へゐにしか | 12月26日 00時51分 |
2679 | 和魂(にきたま)と荒魂ありとふバリ人は諸神祀りてさきはひ満てり | 12月27日 01時19分 |
2681 | いとやすくケータイ番号かはしをり道行く人をたれと知りてか | 12月28日 01時06分 |
2685 | 天網は恢恢なるや繕ひを忘れほころぶ一枚の布 | 12月29日 00時36分 |
2688 | 世にあらむかたちに六つの花びらとなりて降りくるたまゆらの夢 | 12月30日 01時18分 |
2690 | またの世にさらぬ別れのなくもがな千代に八千代に祈りきつらむ | 12月30日 11時59分 |
2692 | 青空を歌ひて悲し陽水の高き声音の吸はれてゆかむ | 12月31日 01時01分 |