桃李歌壇

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あらし、そして三十七

胸のうちにいくつもあらし吹き抜けて三十六の年終わりゆく

南海に台風停滞するというしづまっている街をゆく朝

三十六の最後の朝に彼岸花赤く咲いてるさよならのように

真っ黒の空吹き抜けてゆく風と秋のかなしみ追いかけている

夏の日の迷いに満ちた北の旅なつかしんでるドトール・コーヒー

暗闇にやるかたもなく吸ってるとチリチリ煙草の燃えてかなしい

燃えてゆく煙草の火を美しと思う心よ台風の夜

また何か始まると思いたい三十七の男になって

焦げるように西の稜線真っ赤にてかなしくなってる初めての宵

学ばなきゃいつもいつも焦っては脳細胞を拡大視する

価値はある?やさしく生きる僕だけど時々不安になってくるから

ひとつずつ自分の感覚整理する秋から冬へ大切な季節(とき)

さわさわと街を吹きゆく風のごとさりげない身になりますように