太陽のかすむ朝にまだ若き胡瓜のひとつ枯死していたり 死に行きし胡瓜いとおし人知れず歌もうたわず夢も思わず せめてものいのちの水を濺(そそ)ぎてん屍(かばね)をさらすあわれ汝に いのちあるものの死ゆえにひたぶるに怖き顔して朝の道ゆく 永遠に種子にしあらば生くべきをふと彗星の光よぎりつ 生き生きと伸びて来し日も憂かりけんさながらいとし青き夭折 道なりに歩いてゆけば雨降りていよよますます悲しかりけり 鉛筆でふいに指突く痛めるもなおかなしくていとしき痛み 久々に歩いて駅へ下りたればいのちの色のそっと囁く |