あれはいったい何だったのだろう、遠い時の流れの中を旅している人の子が、 ついに疲れて眠ろうとする夜に、空をわたっていった光の魂(たま)は。その美 しき輝きは、人の子に何か尊いことを語りかけて去っていったようだった。 彗星の去った後、心の中に残された光のざわめきが、毎日少しずつ動いていく のを悲しく思う。歌びとの魂は、そんな悲しみの中で脈うつのだろうか。自分が 一所懸命にさりげなく振る舞っていることが、すべて自分でよくわかっているだ けに、つらいのだ。 徒労に終わることを必死になってするのは、自分のためだ。今ある自分がまだ まだ価値あることを、懸命になって自分に示すためだ。 彗星の過ぎ去りし後ざわめける心の揺れをいかにかはせん 目 次 |