桃李歌壇  伯牙作品集   作者にメール

彗星

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 あれはいったい何だったのだろう、遠い時の流れの中を旅している人の子が、
ついに疲れて眠ろうとする夜に、空をわたっていった光の魂(たま)は。その美
しき輝きは、人の子に何か尊いことを語りかけて去っていったようだった。
 彗星の去った後、心の中に残された光のざわめきが、毎日少しずつ動いていく
のを悲しく思う。歌びとの魂は、そんな悲しみの中で脈うつのだろうか。自分が
一所懸命にさりげなく振る舞っていることが、すべて自分でよくわかっているだ
けに、つらいのだ。
 徒労に終わることを必死になってするのは、自分のためだ。今ある自分がまだ
まだ価値あることを、懸命になって自分に示すためだ。

彗星の過ぎ去りし後ざわめける心の揺れをいかにかはせん

      目    次
 1. 祈 り

 2. さ ざ め き

 3. 病 め る  日

 4. さ び し み

 5. ふ み

 6. 

 7. い の ち

 8. 問 い か け

 9. 日 に け 日 に け

10. 独 行

11. 抵 抗

12. 夭 折

13. リ セ ッ ト

14. 

15. 大 津 行

16. 死 ぬ こ と

17. 再 會

18. こ こ ろ

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