胸に迫る文なりされど必ずや去りゆく人の文はかなしき つと臥せて涙落とすと云えるわが宇宙はじけてぽつんとひとり 身のうちの水分すべて出だせしと君は、はからずせつなかりしも 若き心君のために贈らんとひねもす白き歌集作れり 今日もまた雨の降る日になりにけり悲しき歌を朝から歌う 空暗く泣けるがごとし抽斗(ひきだし)の奥より君の手紙出だしつ 自転車で坂道下る霧雨の吾が心まで刺しいるいたし 菜の花に埋もれていたし胸あつく香れるままにしばし祈らん 雨に濡れ瓦光りぬされば夜は赤きワインを慈しみなん 一日の終わりにワイン慈しむ仕事の電話あれど歌うたう 手にとりて赤きワインのその赤を胸つまるまで見つめていたり 一夜明けて雨なき朝になりにけり祈りの歌を今日も歌わん 雪のごと花散りしきぬたちどまり寂し心に問いかけてみる 中空を花びらの一つ舞いゆきて歌人なれば追いかけている 曇り日は何を思うて居たるらんさびしき背(せな)を忘れかねつも |